日傘は持ち歩かない。大阪270駅で始まる「借りる暑さ対策」

傘のシェアリングサービス「アイカサ」を運営するNature Innovation Groupが、関西の鉄道事業者8社と連携した熱中症対策プロジェクト「COOL MOVE OSAKA」の始動を発表しました。約270か所に1,130本の日傘を配備するこの取り組み——日傘が「街の備品」になる世界を想像してみてほしいのです。

阪急で借りてOsaka Metroで返す

COOL MOVE OSAKA発表会で横断幕を掲げる関西8鉄道事業者とアイカサの関係者たち。Osaka Metro・大阪モノレール・北大阪急行電鉄・近鉄・京阪・南海・阪急・阪神のロゴが並ぶ
© 株式会社Nature Innovation Group

今回の発表で驚いたのは、参加する鉄道事業者の顔ぶれです。Osaka Metro、大阪モノレール、北大阪急行電鉄、近畿日本鉄道、京阪ホールディングス、南海電気鉄道、阪急電鉄、阪神電気鉄道——関西の主要私鉄・地下鉄がほぼ勢揃いしています。

1社だけの導入なら「実験」で終わるかもしれません。でも8社が同時に動くと、話がまるで変わってきます。阪急の駅で借りた傘を、Osaka Metroの駅で返せる。南海で手に取った1本を、京阪沿線で手放せる。この「どこで借りてもどこで返せる」ネットワーク効果こそが、日傘を個人の持ち物から都市の共有資源へと変える鍵になるわけです。

ちなみに阪神電気鉄道は2020年から、阪急電鉄は2025年7月からすでにアイカサを導入済み。阪急では全87駅135か所に展開し、3,400人あまりのユーザーが利用しているとのこと。今回のプロジェクトは、こうした個別の実績を関西全域のインフラへと一気に押し上げる試みといえます。

傘1本で「もう少し歩こうか」に変わる

アイカサのオリジナルデザイン日傘2種。白地に朱色の和柄をあしらったデザインと、六角形の中に大阪の名所モチーフを描いたデザインが開いた状態で並ぶ
© 株式会社Nature Innovation Group

アイカサ代表取締役の丸川照司氏は、大学在学中に「使い捨て傘を減らしたい」という思いからサービスを立ち上げた人物。現在の会員数は約92万人に達しています。

丸川氏が発表会で紹介したデータがひとつ、印象に残りました。アイカサ利用者の約8割が「街での立ち寄りが増えた」と回答しているそうです(同社調べ)。傘を1本借りられるだけで、人は街を歩き続ける。雨でも、猛暑でも。

考えてみれば当然かもしれません。突然の雨や強い日差しで「早く屋内に入りたい」と思っていた足が、傘1本で「もう少し歩こうか」に変わる。移動の自由が確保されると、カフェにも寄るし、商店街ものぞく。傘という小さな道具が、街の経済を動かす導線になっている——この因果関係は、直感に反するようでいて、妙に腑に落ちます。

所有しないから気恥ずかしくない

Osaka Metroの担当者がアイカサのレンタルスタンド前で登壇し、マイクを持ってプロジェクトへの意気込みを語る
© 株式会社Nature Innovation Group

プロジェクトが掲げるのは「猛暑でも安全に歩けるまち大阪」。関西全域で1日10万人規模の利用を視野に入れているといいます。大阪限定のオリジナルデザイン傘も披露され、大阪府民や訪日外国人へのインタビューをもとに、大阪らしさと和傘の要素を取り入れたデザインに仕上がっているそう。今後は京都・奈良・神戸などのご当地デザインや、英語・中国語・韓国語の多言語対応も予定されています。

ここでふと思うのは、日傘にまつわる心理的なハードルのことです。「男性が日傘を持つのは気恥ずかしい」「荷物が増えるのが嫌」——そんな声は少なくありません。でも、シェアリングの傘なら話が違う。駅で借りて、次の駅で返す。それは「マイ日傘を持ち歩く自分」ではなく、「街のサービスを使う自分」です。所有ではなく利用だからこそ、性別も年齢も関係なく手に取りやすくなる

丸川氏は「私たちが提供したいのは、単に傘そのものではなく、雨の日も晴れの日も、安心して快適に移動できる体験です」と語っています。傘の向こうにあるのは、モノではなく「移動の自由」。猛暑が常態化していくこれからの夏、私たちが本当に必要としているのは、高性能な日傘1本よりも、どの駅にも傘がある街の仕組みなのかもしれません。

アイカサ(COOL MOVE OSAKA)

【展開エリア】大阪府内主要駅を中心に約270か所
【料金】時間課金 140円〜 / 月額使い放題 360円
【新規登録特典】アプリ新規登録で2ヶ月使い放題 ¥0
【登録・レンタル】登録1分、レンタル10秒
【決済方法】キャリア決済(au・ソフトバンク)、クレジットカード等

Top image: © 株式会社Nature Innovation Group
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。