災害支援から、地域の新しい価値へ。八代のい草プロダクト「izaiza」が生まれるまで

い草と聞いて、真っ先に思い浮かぶのは畳の香り。けれど最近、自宅に畳の部屋がある人はどれくらいいるでしょうか。

日本の住環境からじわじわと姿を消しつつある、あの青い草が、まったく別の顔を見せるプロダクトに生まれ変わりました。しかもその出発点は、災害への「寄付」です。

義援金を「届けて終わり」に
しなかった理由

2025年の熊本豪雨で大きな被害を受けた八代(やつしろ)地域。国内のい草生産の大部分を担うこの土地の中小企業を支援するため、エヌエヌ生命保険からBRIDGE KUMAMOTOへ寄付が届きました。

BRIDGE KUMAMOTOは、2016年の熊本地震をきっかけに生まれた団体で、企業や団体からの寄付を「届けて終わり」にせず、地域の課題や可能性を広げる取り組みへつなぐ「寄付のコーディネート」を行っています。

今回も、ただ資金を届けるのではなく、地域産業そのものに新しい価値を生み出す道を選びました。そこで白羽の矢が立ったのが、い草の可能性を追求してきたプロダクトユニット「itiiti」です。

い草を「分解と集積」で
読み替えるデザイナーたち

izaizaのラグ、毛布、包丁、木製の容器、草花柄のシャツなど地産地匠プロジェクトの各種プロダクトを自然の中で撮影したコラージュ
© 一般社団法人 BRIDGE KUMAMOTO

itiitiは田中典子さんと村上貴美さんの二人組。い草をアクセサリーやアート作品に展開してきた実績を持ち、素材を「分解と集積」という独自の視点で捉え直すのが特徴です。

畳表として編まれることが当たり前だったい草を、一度ほどいて、まったく違う表情に再構築する。そうして生まれたのが、ラグや敷物として使える新プロダクト「izaiza」でした。

この「izaiza」が、中川政七商店が主催する「地産地匠アワード2026」でグランプリを受賞。地元の素材と地元のデザインの掛け合わせから生まれたプロダクトを評価し、受賞後の販売・販路支援まで行うこのアワードで、最高賞に選ばれたのです。

「買う」が「知る」になり、
「知る」が支援になる回路

地産地匠アワード2026グランプリの授賞式で、開発チームやitiitiのデザイナーらがizaizaのラグと賞状を持って登壇する集合写真
© 一般社団法人 BRIDGE KUMAMOTO

注目したいのは、このプロジェクトが描く支援の循環です。

寄付がプロダクト開発に変わり、デザインアワードで評価され、販路が生まれ、商品を手に取った人が八代という土地を知る。消費が関心を生み、関心が次の支援や交流につながっていく——BRIDGE KUMAMOTOはそんな仕組みを「クリエイティブの力でつくりたい」としています。

2026年7月28日には熊本県を再び大きな地震が襲い、八代市でも最大震度6強を観測しました。豪雨をきっかけに始まったプロジェクトが、新たな災害とも向き合うことになった現実があります。

災害が繰り返されるこの国で、「寄付して終わり」ではない支援のかたちを、一枚のラグが静かに提案しています。い草の香りを知らない世代にこそ、手に取ってほしいプロダクトかもしれません。

izaiza(地産地匠アワード2026 グランプリ)

【受賞】地産地匠アワード2026 グランプリ(賞金1,000,000円)
【主催】中川政七商店
【開発】一般社団法人BRIDGE KUMAMOTO × itiiti
【受賞作品詳細】地産地匠アワード2026 グランプリ受賞作品ページ
【公式サイト】BRIDGE KUMAMOTO/itiiti

Top image: © 一般社団法人 BRIDGE KUMAMOTO
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