「小さな保育園」が学童になる。放課後の“居場所不足”を埋める新しい選択肢

「全国小規模保育協議会」が発表したリリースによると、同協議会はこども家庭庁の令和8年度モデル事業に採択され、全国5都市の小規模保育園で小学生の放課後預かりを始めるそうです。

0〜2歳児のための小さな園が、なぜ小学生を受け入れるのか。その背景には、「小ささ」を強みに変える発想の転換がありました。

数字では測れない
「放課後の居場所不足」が広がっている

こども家庭庁の最新データによれば、放課後児童クラブ(学童保育)の登録児童数は約157万人と過去最高を更新しています。それでもなお、約1.6万人の待機児童が発生しているのが現状です。

数字だけを見ると「あと少し枠を増やせば解決するのでは」と思えるかもしれません。けれど、問題の本質は単なる定員不足だけではなさそうです。都市部の学童は過密化が進み、40人、50人がひとつの部屋で過ごすケースも珍しくありません。大人数の環境に馴染みにくい子、個別の配慮が必要な子にとって、放課後の「安心できる居場所」は制度の数字以上に足りていない──共働き家庭の保護者なら、この感覚に覚えがある方も少なくないのではないでしょうか。

そこで注目されたのが、小規模保育園の「余裕スペース」でした。小規模保育園は主に0〜2歳児を対象とし、定員は20名未満。少人数で家庭的な環境が特長です。少子化の影響で定員に余裕が出始めた園もあるなか、この「落ち着いた規模感」こそが、大規模学童では満たせないニーズに応えられるのではないか。そんな逆転の発想から、今回のモデル事業は生まれています。

5都市で始まる、
それぞれの「放課後の居場所」

全国5都市で始まる実証モデルは、それぞれまったく異なるアプローチをとっています。

個人的に最も驚いたのは、静岡市の「おにぎり保育園 夜間児童クラブ」。夜間保育園の機能を活かし、17:00から翌4:00まで小学生を預かるというものです。エッセンシャルワーカーをはじめとする夜間就労世帯の子どもが、深夜にひとりで過ごさなくて済む仕組み。「夜間保育園」という既存の資源を、学童期の子どもにも開くという発想に、思わず膝を打ちました。

仙台市では、認定NPO法人フローレンスが運営する拠点で、小学3〜6年生が園児の世話を体験する「こどもインターン」プログラムを実施します。小学生が「先生」役を担うことで、異年齢の関わりが自然に生まれる設計です。横浜市では医療的ケア児の預かりに多職種連携で対応し、名古屋市では外国人講師のいる多文化環境を提供、京都市では児童発達支援施設の余裕スペースを活用して卒園後のアフターケアを行います。

5つのモデルに共通しているのは、既存の大規模学童では拾いきれなかった子どもたちのニーズに、小規模保育園ならではの専門性と親密さで応えようとしている点です。

「小ささ」が放課後を変える力に

同協議会の理事長・橋本浩一氏は、小規模保育が制度化されて10年が経ったいま、保育園の役割を「在園児のための場所」から「地域全体でこどもと子育て家庭を支える拠点」へ広げていく構想を「地域おやこ園」と名づけています。201団体が協働する同協議会だからこそ、全国規模での実証が可能になったともいえるでしょう。

「小1の壁」という言葉が広く知られるようになって久しいですが、壁の向こう側にある風景は家庭ごとにまるで違います。大人数が苦手な子、医療的ケアが必要な子、親が夜勤の子。その一人ひとりに合った「放課後」を、すでに地域にある小さな保育園が担えるかもしれない。

もしご近所に、少し静かになった小規模保育園があるとしたら。その園が持つ「小ささ」は、弱みではなく、誰かの放課後を変える力になり得るのかもしれません。

Top image: © iStock.com / paylessimages
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。