「墓じまい」のあと、何を残す? 140年続く墓石屋がつくった手のひらサイズの墓

岐阜県大垣市で1883年(明治16年)から墓石を彫り続けてきた石安株式会社が、自宅で使える手のひらサイズのお墓「SHINOBO」を発売しました。

約5年の開発期間を経て生まれたこのプロダクト、一辺わずか60ミリの石の立方体です。お墓なのに、お墓らしくない。でもよく見ると、そこにはお墓参りのすべてが詰まっていました。

「守るか、なくすか」の二択に
140年目の墓石屋が出した第三の答え

木のカウンターに並んだ3つのSHINOBO cube。御影石と大理石の立方体に香が立ち、小さな花が添えられている。背景に薪ストーブのある居間が見える
© 石安株式会社

お盆が近づくと、ふと頭をよぎる人も多いのではないでしょうか。「実家のお墓、どうしよう」と。

墓地が遠方にある。継いでくれる人がいない。子どもや孫に管理の負担を残したくない──。そうした理由から「墓じまい」を選ぶ家庭は年々増えています。

けれど石安が140年にわたって顧客と向き合うなかで繰り返し耳にしてきたのは、意外にもこんな声だったそうです。

「管理の負担はなくしたい。でも、手を合わせる場所まで失いたくはない」

お墓を守り続けるか、完全になくすか。その二者択一のあいだに、もうひとつの選択肢があっていい。SHINOBOは、そんな問いから生まれました。

墓石を小さくしたのではなく
「墓参り」を5つの所作に分解した

SHINOBO cubeの全バリエーション。白い大理石・ベージュの御影石・黒御影石・赤御影石など多色の60ミリ角キューブが整列し、花立て・香立て・火立て・水受け・形見入れの各エレメントの上部加工の違いが見える
© 石安株式会社

SHINOBOが面白いのは、単に墓石をミニチュアにしたわけではないところです。

開発チームはまず、お墓を構成する要素を一つひとつ分解しました。花を供える「花立て」、お香を焚く「香立て」、ろうそくを灯す「火立て」、水を捧げる「水受け」、そして遺品や形見を納める「形見入れ」。

この5つの所作こそがお墓参りの本質だと捉え、それぞれを天然の御影石や大理石でできた小さなモジュールとして再設計したのです。

「SHINOBO cube」は約60ミリ角の立方体。5種類のエレメントから必要なものだけを選んで、自分だけの組み合わせをつくれます。

もうひとつの「SHINOBO gorin」は、日本で古くから供養の象徴とされてきた五輪塔(空・風・火・水・地の5つの形を積み重ねた石塔)がモチーフ。横に並べればモダンなオブジェ、縦に重ねれば五輪塔の佇まいが現れるという二面性を持っています。

どちらも和室にも洋室にも馴染むデザインで、職人が一つずつ手作業で仕上げます。

墓じまいした「あの石」を
捨てずに手元へ残せるという救い

石材加工の工房で職人が研磨機を使いSHINOBOのキューブを手作業で仕上げている様子。白黒写真
© 石安株式会社

もうひとつ、心に残る仕掛けがあります。墓じまいで撤去した墓石の一部を再加工して、SHINOBOに生まれ変わらせることができるのです。

何十年も家族が手を合わせてきた石を、すべて処分するのではなく、その一片を手元に残す。場所は変わっても、石に刻まれた時間ごと受け継ぐという発想です。

墓石のプロだからこそできる提案であり、140年の矜持がここに表れている気がします。

お墓の価値は「場所」や「制度」ではなく、故人を想って手を合わせるという日々の所作そのものにある──。SHINOBOはそう語りかけてきます。

このお盆、帰省する人もしない人も、「偲ぶ」という行為の居場所について、少しだけ考えてみてもいいかもしれません。

SHINOBO

【ラインナップ・価格】SHINOBO cube:1エレメント 税込39,600円/SHINOBO gorin:5点セット 税込198,000円
【素材】天然御影石・天然大理石
【販売】SHINOBO公式サイト、墓石の石安 店舗(岐阜県大垣市赤坂町1805)

Top image: © 石安株式会社
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