空き家が「子育てマイホーム」になる。福岡県の官民連携、70戸から始動
新築マンションの価格が手の届かないところまで上がっていく——そんな実感、ありませんか。九州・沖縄地方のマンション価格指数は、2010年平均の約2.8倍にまで膨らんでいます。一方で増え続ける空き家。この「買えない」と「余っている」を結びつけた福岡県の新事業が、ちょっと面白いのです。

「中古=妥協」を覆す、
行政の踏み込み方

福岡県が2026年8月26日に始動させた「空き家再生子育て応援事業」。県・市町村・民間の買取再販事業者(中古住宅を買い取り、リフォームして販売する専門業者)の三者が協定を結び、空き家を子育て世帯向けの住まいに再生するプロジェクトです。
注目したいのは、行政の関わり方の深さ。空き家が市場に出てこない最大のボトルネックは、実は「相続手続きが終わっていない」こと。県はその手続き補助の財源まで確保し、市町村が地域の空き家を掘り起こして所有者に声をかけ、民間事業者が買い取ってリノベーションする——という一気通貫の流れを制度として設計しました。
住宅購入者が中古を選ばなかった理由としては「価格面の不安」「品質面の不安」「見た目の汚さ」が挙げられています。つまり、品質や見た目以前に「よく分からないから怖い」という心理的ハードルが大きいわけです。行政がプロセス全体に関与することで、この「不透明さ」を取り除こうとしている点が、従来の補助金型の空き家対策とは一線を画しています。
売るのは「家」ではなく
「暮らしのセット」

もうひとつ興味深いのは、住宅というハードだけでなく、その地域の子育て支援策や暮らしの魅力をセットで提案するという方針です。
子育て仕様のリノベーション例も具体的で、小さな子どもを見守りやすい広い間取り、親子で入れるゆったりした浴室、車2台分の駐車スペースなど、「子育て中の日常」から逆算した設計になっています。
「家を買う」という行為が、実は「暮らしを選ぶ」ことと同義だとしたら。この事業は、物件スペックではなく「この街でどんな子育てができるか」という問いに答えようとしているように見えます。
70戸から始まる実験の行方

2026年度の対象は飯塚市・柳川市・遠賀町・築上町の4市町で、再生予定は70戸。福岡県全体の空き家約33.5万戸(2023年時点、総務省「住宅・土地統計調査」)からすれば、まだほんの一滴です。
それでも、「新築が当たり前」という日本の住宅観に、行政が仕組みごと揺さぶりをかけた意味は小さくないはず。住宅価格の高騰は福岡に限った話ではありません。この実験がうまく回れば、全国の「買えない×余っている」を解くひとつの型になるかもしれません。
空き家再生子育て応援事業
【対象エリア】飯塚市・柳川市・遠賀町・築上町(福岡県内4市町)
【再生予定戸数】70戸(2026年度)
【問い合わせ】福岡県建築都市部住宅計画課(092-643-3732)
【公式サイト】福岡県 空き家再生子育て応援事業






