風力発電の「その後」を救う。7,000枚の巨大ブレードがセメントに生まれ変わった
風力タービンのブレードは、地上100メートル以上の高さで何十年も風雨に耐えるように設計されています。
でも、その「壊れにくさ」が退役後には裏目に出る——と聞いたら、ちょっと意外じゃないでしょうか。
米「Economic Times」が報じた記事が、アメリカの二つの現場を対比しています。一方は巨大ブレードが積み上がる埋立地、もう一方はそれをセメントの原料に変える工場。同じ素材の行き先が、まったく違う結末を迎えていました。
「壊れない設計」が
捨てられない問題に
現代の風力ブレードの多くは、ガラス繊維を強力な樹脂で固めた複合素材でできています。この樹脂は一度固まると二度と溶かせない性質を持っていて、ペットボトルのように溶かして再成形することができません。
つまり、風の力を受け止めるために「絶対に壊れないように」つくられたものが、役目を終えたあとも「絶対に分解できない」まま残り続けるわけです。
ワイオミング州キャスパーの埋立地には、2020年9月までに1,124枚のブレードが搬入された記録があります。州内の風力発電所が古いタービンを新型に入れ替える過程で生まれた廃棄物でした。
巨大な構造物を輸送するためにわざわざ切断し、土に埋める。再生可能エネルギーの象徴が、最終的に埋立地に眠るという皮肉な光景です。
ブレード1枚が
石炭5トンの代わりになる仕組み
ところが、同じ退役ブレードにまったく別の出口を用意した企業があります。フランス系環境サービス大手のVeolia(ヴェオリア)です。
ミズーリ州にある同社の施設では、ブレードを破砕してセメント製造の工程に投入しています。セメントをつくる巨大な窯の中で、ブレードの鉱物成分は石灰石やシリカといった従来の原材料の代わりになり、可燃成分は製造に必要な熱エネルギーを供給します。
同社の推計では、ブレード1枚あたり約5米トンの石炭と、一定量の原材料を代替できるとのこと。2020年以降、7,000枚以上がこのルートで処理されました。
ただし、これは古いブレードから新しいブレードをつくる「完全な循環」ではありません。あくまで別の産業の原料として活用する「素材回収」です。元記事もこの点を明確に区別しており、何でも「リサイクル」と呼ぶことの危うさを指摘しています。
「出口」まで含めて
エネルギーを選ぶ時代へ
欧州ではすでに、退役後に分解できる樹脂を使った次世代ブレードの研究が進んでいます。ドイツのフラウンホーファー研究機構による「ReusaBlade」プロジェクトでは、あとから樹脂を外してガラス繊維を回収できる設計が試験されています。
とはいえ、これらはまだ開発段階。米国エネルギー省も、現実の選択肢は輸送コストや地域の施設状況に左右されると認めています。
日本でも洋上風力の大規模導入が進むなか、この問題は決して対岸の火事ではないはずです。「再エネだからクリーン」で思考を止めず、電力を生み終えたあとの素材がどこへ行くのか。エネルギーの選択に「出口の設計」という視点を加えることが、これからの私たちには求められているのではないでしょうか。






