NPOは信頼できる?3000人の声からわかったこと
「信頼できる組織」と聞いて、何が思い浮かぶだろう。
大手企業、権威あるメディア、歴史あるブランド……そのほとんどが、民間企業だったのではないだろうか。もちろん間違いではないが、社会課題という文脈に立つと、一般的な企業には「利益がないと動き出せない」という弱点がある。
これに対し、利益を顧みずに慈善活動を行える存在が「NPO」だ。
戦争、災害、環境破壊……様々な社会課題の解決が求められる昨今、アクターとして活動するNPOの存在は、以前よりも重要であるはずだ。
「非営利」を掲げて活動する組織だが、実際はどれだけの人々から信頼されているのだろう?
3月29日、公益財団法⼈日本⾮営利組織評価センターが「NPOの信頼性についての意識調査」を発表。全国3000人を対象に、「NPO」「民間企業」「政府」「マスメディア」、それぞれのセクターの信頼性を調査した。
結果の概要は、以下の通りだった。
- 「持続可能性」「コンプラ遵守」「総合的な信頼度」1位は民間企業。
- 「信頼していない」最多得票の組織は政府。企業と約4倍の差。
- 「倫理観」や災害・紛争などの緊急課題において、最も評価が高いのはNPO
- 87.9%が「信頼できるNPOなし」。セクター全体の信頼度は高い一方、認知や財政的な透明性に課題あり。
- 「団体規模・実績」よりも「情報公開・情報アクセス」が信頼できる要素に。
- 寄付先の分野ワースト3は「人権・平和」「教育・研究」「地域安全」。
9割の人が「信頼できるNPOがない」
21%の人がNPOを信頼できる組織と回答し、NPOは民間企業に次いで信頼度が高い結果となった。しかし、その一方で「特定の信頼できるNPOがある」と答えた人はわずか12.1%。約9割の人にとって、信頼できるNPOがないということになる。
一体何がNPOに欠けているのだろうか。
ビジョンだけでは不十分。「情報の公開」が信頼の鍵
NPOの課題として浮き彫りになったのは、情報の透明性の欠如だ。
信頼できるNPOに必要な要素として考えられる項目を訊いたところ、56.1%が「情報(活動内容や成果、決算報告)が公開されていること」、55.4%が「問合せ窓口があること」と回答。
団体の知名度よりも重要な要素と考える人が多いことが分かる。
しかし、NPOについて、「財政面に透明性があると思う」と答えた人はわずか14%。
情報を不十分に感じて、不信感をもったり、寄付や支援を躊躇したりする人も一定数いるようだ。
今回比較した4セクターの中で、NPOは「倫理観」や「課題への取り組み」という点では、最も高く評価されている。
しかし、この調査が明らかにしたのは、ビジョンだけで信頼を得られるわけではなく、非営利だとしても財政面の透明性の担保は必須であるということ。
自分たちが「何者」で、「どんなこと」をしているのか。
活動の実態を数値やデータを通して明らかにすることで、社会課題に立ち向かう“仲間”である、と人々に証明できるはずだ。