衝動買いより「最適解探し」。Z世代が買い物で求める新しい快感
カルチャーとブランド戦略を分析するニュースレター「Matter」が、Z世代の消費行動に起きている地殻変動を報じています。キーワードは「Tendency Maximising(傾向最大化)」。もう一回スクロールすれば、もっと良いものが見つかるはず——その信念が、買い物のかたちを根本から変えているというのです。
「衝動買いしない」Z世代は
買い物の快楽を
イギリスの調査会社PortasとSnapが行った調査によると、Z世代の買い物客の95%が、自分のことを「衝動的」とは表現しなかったそうです。
代わりに上位に来たのは「予算意識が高い」(25%)や「思慮深く慎重」(19%)という言葉でした。
この数字、ちょっと衝撃的じゃないですか。
かつて「若者=衝動買い」というイメージがありましたが、いまの若い世代はむしろ真逆。TikTokやPinterest、さらにはAIまでを検索エンジンとして駆使し、商品のフィット感や品質、パッケージまで徹底的にリサーチしてから購入に至ります。
Pinterestのデータでは、Z世代の70%が「十分な選択肢を見ることと、圧倒されることのバランスを取るのが難しい」と回答しています。選択肢が多すぎて決められない——でも、探すこと自体はやめられない。
Boston Consulting Groupの分析では、Z世代は「ハントのスリル」、つまり掘り出し物を見つける興奮や、限定品・完売品を手に入れる魅力を、他の世代より7ポイントも高く重視しているといいます。
購入ボタンを押す瞬間の快感より、最適解を見つけ出すプロセスそのものに喜びがある。買い物の快楽の重心が、完全に移動しているわけです。
注文しないフードデリバリーが
韓国で流行る理由
この変化を象徴するエピソードがあります。韓国では、注文を送信せずにメニューを閲覧し、カートに商品を入れるだけの「偽フードデリバリーサイト」が人気を集めているそうです。
買わないのに、選ぶ。カートに入れるだけで満足する。消費の快楽が、購買という行為から完全に切り離されている——正直、最初に読んだとき「そこまで来たか」と思いました。
でも、よく考えると心当たりがあるんですよね。ECサイトのタブを何十個も開いて比較して、結局どれも買わずに閉じた経験。メルカリで「いつか出るはず」の一品を、保存した検索条件で毎日チェックする習慣。日本に暮らす私たちも、すでにこの探索型消費の渦中にいるのかもしれません。
「かわいいから」ではなく
「なぜ存在するのか」で選ぶ時代
元記事が提示するもうひとつの重要な概念が「認識論的価値」です。平たく言えば、「その商品がなぜ世の中に存在するのか」という本質的な問いに、消費者が敏感になっているということ。
ファッションブランド「Rogue Garms」のEmma Rogueは、消費者がブランドを身につけるとき「このブランドを支持することで、自分は世界にどんなメッセージを発信しているのか」と自問するようになったと指摘しています。
「かわいいから好き」ではなく、「自分のアイデンティティを表現するための素材として選ぶ」。買い物が、自己表現の編集作業になっているのです。
選択肢が産業革命以前の約1億倍に膨れ上がったとされる現代。その膨大な海の中で、私たちは「最善」を探し続けています。でもふと立ち止まって考えてみると、探し続けること自体が、もうひとつの消費になっているのかもしれません。あなたのスマホの中にも、まだ決済されていない「お気に入りリスト」、眠っていませんか。






