昇進した瞬間、相談相手が消える。1,050人のデータが示した「管理職の孤独」

中途入社には研修がある。新卒にもある。では、昇進した人には?

辞令と「おめでとう」。多くの職場で、管理職への移行期に用意されているのは、おそらくそれだけです。コーチングサービス「ZaPASSコーチング」を運営するZaPASS JAPAN株式会社が、申込者1,050名の事前アンケートを分析したところ、昇進という「めでたいはず」の出来事の裏側に、構造的な孤独が浮かび上がりました。

1on1を「する側」に回ったとき、
「される側」の席が消える

マネージャーが役割変化への言及、自信・不安への言及、人・組織と自分の進路の両方を相談する割合が他の役職より高いことを示す3つの棒グラフ
© ZaPASS JAPAN株式会社

この分析は、2024年4月から2026年7月にかけて同サービスに申し込んだ人のうち、一般社員500名、マネージャー300名、事業責任者・役員100名、経営者150名をランダム抽出したものです。

注目すべきは、申込理由の自由記述に「役職・役割が変わったこと」自体を書いていた人の割合。マネージャーでは7.7%にのぼり、一般社員(1.0%)の約8倍でした。

しかも、該当した23名のうち半数以上が、同じ記述のなかで「自信がない」「不安」といった言葉にも触れています。

さらに興味深いのが、「上司」「上長」というキーワードの出現率です。マネージャーは6.3%で、4つの役職レイヤーのなかで最も高い数値を記録しました。

昇進すると、上司の数は減ります。かつての同僚は評価対象や競争相手になり、部下には弱みを見せづらい。つまり、ポジションが上がるほど「社内で本音を話せる相手」が構造的に減っていくわけです。

マネージャーだけが抱える
「自分」と「組織」の引き裂かれ

役職別に自分の内面・自分の進路・人・組織・事業という4つの相談テーマの割合を示す表。マネージャーは自分の進路と人・組織がほぼ同率
© ZaPASS JAPAN株式会社
役職別にキャリアプランと転職への relative なニーズを示す折れ線グラフ。マネージャーはキャリアプランと転職の両方が併存
© ZaPASS JAPAN株式会社

扱いたいテーマの比較も、マネージャー層の特異性を浮き彫りにしています。

「自分の進路」を選んだ割合は、一般社員の56.2%から経営者の10.0%まで、役職が上がるにつれて一貫して下がります。逆に「事業」は上がっていく。きれいな階段構造です。

ところがマネージャーだけは、「自分の進路」(42.3%)と「人・組織」(45.3%)がほぼ拮抗していました。自分のキャリアも気になるけれど、チームのことも放っておけない。この引き裂かれは、他のどの役職にも見られません。

転職を相談テーマに選んだマネージャー20名のデータも象徴的です。転職「だけ」を選んだ人は、ゼロ。全員がキャリアプランや価値観、組織の課題を併せて選んでいました。「辞めたい」のではなく、「この役割をどう引き受ければいいのか分からない」という問いを抱えている姿が見えてきます。

「昇進オンボーディング」という
まだ名前がなかった支援

ZaPASSはこの分析を受けて、昇進直後の移行期を支える仕組みを「昇進オンボーディング」と名付けました。管理職研修がマネジメントスキルを教えるものだとすれば、昇進オンボーディングは「自分はこの役割をどう担うのか」という、もっと手前の問いを扱う支援です。

同社パーソナルコーチング事業部の大久保亮佑氏は、「昇進にだけは、新しい役割をどう引き受けるかを扱う時間が多くない。その空白を、マネージャー層は社外に探しに来ている」と語っています。

あなたの職場には、昇進した人のための「オンボーディング」がありますか?

中途入社の人に用意するのと同じくらいの丁寧さで、昇進した人の移行期を支える。それだけで、管理職の孤独の風景は少し変わるのかもしれません。

Top image: © iStock.com / guvendemir
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。