年賀状はもう古い? デジタル時代の「ビジネス儀礼」を考える
年末年始の風物詩として、長年親しまれてきた年賀状。だが、近年その存在感は薄れつつあるようだ。企業においては、すでに半数近くが「年賀状じまい」を完了させているという。
2025年には年賀状を送る企業は
3社に1社になる?
「株式会社帝国データバンク」が2024年12月に実施した調査によると、企業における「年賀状じまい」の動きは想像以上に進んでいる。というのも、すでに約半数の企業が年賀状じまいを実施済みという結果が出ているからだ。
同調査では、1,339社の企業を対象に年賀状に関する意識調査を実施。その結果、「すでに年賀状じまいをした」と回答した企業は全体の49.4%にものぼった。
さらに詳しく見てみると、「2020年1月分以前に送ることをやめた」企業が9.5%、「2021年1月分~2023年(昨年)1月分の間に送ることをやめた」企業が13.4%という結果に。コロナ禍をきっかけに、多くの企業が年賀状の慣習を見直すようになったと考えられる。
そして注目すべきは、「2024年(今年)1月分から送ることをやめた」企業が9.6%、「2025年(来年)1月分から送ることをやめる」企業が17.0%に達している点だ。この数字が意味するもの、それは2025年には年賀状を送る企業は3社に1社になってしまうかもしれないという事実である。
コスト削減? それとも時代の流れ?
企業が年賀状をやめる「本当の理由」
では、なぜ多くの企業が年賀状じまいを選択するのだろうか。コスト削減だけが理由だろうか? 同調査で企業から寄せられたコメントを紐解いてみると、そこにはさまざまな理由が見て取れる。
コスト削減を理由に挙げる企業ももちろん存在する。「企業間の年賀状は元々関係の薄い先ほど年賀状だけのやり取りになっている印象を受けていたため、コロナ禍での社会情勢に乗じて廃止とした。以後は会社HPでの挨拶で済ませている」という化学品製造のある企業のコメントは、多くの企業にとって「耳が痛い」意見かもしれない。
いっぽうで、時代の変化とともに、年賀状に代わる新たなコミュニケーションの形を模索する企業も増えているようだ。「SDGsの定着と社会的に儀礼などは廃止の方向で進んでいると判断し、年賀状じまいとした」というメンテナンス・警備・検査の企業のコメントは、まさに時代の流れを象徴していると言えるだろう。
デジタル時代における
新たな「繋がり」の形とは
企業の年賀状離れが加速するいっぽうで、年賀状は日本の伝統文化だと、その価値を改めて見直す動きもある。
「昔ながらの風習で発送しており、年賀状にこだわりはなくメールを利用すればよいと思っていたので、5年以上前にやめた」(不動産)という企業もあれば、「日本の文化として他の代替はできないと信じている」(化学品製造)、「親密な取引先とは、年賀状交換を続けている」(建設)という企業もあるように、企業によって考え方はさまざまだ。
デジタル化が加速する現代において、ビジネスにおけるコミュニケーションツールは多様化している。 企業であれ個人であれ、大切なのは形式的な慣習に捉われるのではなく、相手に真心を込めて感謝の気持ちを伝えることであることに変わりはない。その手段が年賀状であっても、Eメールであっても、あるいはその他の形であっても……それは変わらないはずだ。