Z世代を中心に広がる「自分らしさ」疲れ。誰もが求める、ちょうどいい“らしさ”

「自分らしく生きよう」「個性を活かして活躍しよう」──。現代社会では、あらゆる場面でこのメッセージが溢れている。誰もが、自分だけの個性を見つけ出し、輝けるようにと願っているはずだ。

そのいっぽうで、そんな「自分らしさ」という言葉に息苦しさを感じている人も少なくないのではないだろうか。

「活躍格差」社会
若者を苦しめる、自己実現プレッシャー

厚生労働省の調査によれば、新卒入社後3年以内に約3割もの若者が離職しているという。これは、「自分らしい働き方」を求めて転職を繰り返す若者の増加を示すデータとも言えるだろう。

学生時代にキャリア教育を通して「理想の自分」を思い描いたものの、いざ社会に出ると、現実とのギャップに苦しみ、理想と現実の狭間で自分を見失ってしまう若者も多いのかもしれない。

「QO株式会社」が昨年12月に発表した「生活者見立て通信 #005」では、心理学博士の榎本博明氏の言葉を引用し、「『自己実現』『活躍』『輝く』が社会の活気を奪う」と指摘している。誰もが活躍を求められる社会は、いっぽうで「活躍できない」と感じてしまう人を生み出してしまう側面も孕んでいるのだ。

SNSというフィルター
理想と現実の境界線

現代社会における「自分らしさ」の表現は、SNSの存在によってさらに複雑化していると言えるだろう。

「株式会社シンシア」が2022年に実施したZ世代800人を対象にした「私らしさ」に関する意識調査によると、「私らしさ」とは何かを答えられない人が48.6%にのぼったという。約半数もの若者が、自分の個性や魅力を明確に言語化できていないという結果は、私たちに多くの示唆を与えている。

誰もが煌びやかな日常や個性的なライフスタイルを発信するSNS上では、「自分らしさ」はまるで商品のように扱われているようにも見える。しかし、画面の向こう側にある「本当の自分」と比較してしまい、劣等感や焦燥感を抱いている人も少なくないのではないだろうか。

「自分らしさ」の多様性
人と比べる必要なんてない!

「QO株式会社」のプランナーは、このような現状に対して「入試や就職など多様な場面で個性が求められる昨今、そもそも自分の個性がわからなかったり、個性を出すことで周りから浮くのは嫌だったりと、悩んでいる方が増えているようです。そんななかで求められているのは、無理をしたり自分を偽ったりせずに、ちょうどいい“らしさ”を体現できることではないでしょうか」とコメントしている。

彼らの言葉は、まさに現代社会で生きる私たちへのメッセージと言えるだろう。「自分らしさ」は、他人と比較して優劣をつけるものでも、無理に演出するものでもない。等身大の自分を認め、自分らしくいられる場所やコミュニティを見つけることこそが、現代社会における「ちょうどいい“らしさ”」を見つける鍵となるのではないだろうか。

大切なことは、自分らしさは十人十色であり、唯一絶対の答えがないということだ。周りと比較して焦ったり、無理に自分を演じようとしたりする必要はない。自分自身の価値観や幸福度を大切にし、自分らしくいられる場所や方法を模索していくことが、真の「自分らしさ」の実現に繋がるのではないだろうか。

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