ジョブ型雇用は希望? 障害者が本当に求める働き方とは

「障害者雇用」は企業にとってもはや義務ではなく、可能性を広げるチャンスとして捉えられ始めている。法改正やダイバーシティ&インクルージョンの広がりを背景に、企業は“戦力”となる人材を求め、障害者雇用にも変化が訪れている。

「パーソルダイバース株式会社」が障害者雇用に取り組む企業に実施した調査結果によれば、それは大きな誤解かもしれない。 なぜなら、障害のある人が仕事に求めるものは、決して特殊なものではなく、むしろ誰もが共感できる普遍的な願いであることが浮き彫りになったからだ。

給与と配慮、揺るがない2つのニーズ

「パーソルダイバース株式会社」が、2024年8月に発表した調査によると、企業側の4社に1社が、今後の障害者採用において「自社の収益業務に貢献してもらうため」と回答している。これは、従来の「法令遵守」から「人材の戦力化」へと、企業側の意識がシフトしていることを明確に示している。

では、当事者である障害者自身は、この変化をどのように捉え、どのような働き方を望んでいるのだろうか。

「現在」の仕事で重視することの1位は「収入の向上」(31%)、2位は「障害や体調への配慮を重視し、無理せずはたらき続けること」(29.9%)という結果。 そして「今後」についても、この2点が上位を占めており、1位は「障害や体調への配慮を重視し、無理せずはたらき続けること」(32%)、2位が「収入の向上」(29.2%)だった。

つまり、障害のある人にとって、適切な待遇や労働環境が確保されていることはもちろん、長く安心して働き続けられる環境であることも同様に重要視されていると言えるだろう。

©パーソルダイバース株式会社

「貢献」よりも「安定」
企業との意識ギャップ

近年、企業側の障害者雇用に対する意識は、「法令遵守」から「企業活動への貢献」へと変化しつつある。 障害者も企業の一員として、その能力を最大限に発揮し、企業の成長に貢献する。 こうした考え方は、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の観点からも重要視されている。

しかし、ここで注意したいのは、企業側の意識変化と、障害のある当事者の意識との間に、ギャップが生じている可能性だ。

前述した通り、障害のある人が仕事に求めるのは「収入」と「体調への配慮」。 これは、2020年、2021年に同社が実施した同様の調査でも同様の結果が出ており、この傾向はここ数年で大きく変化していないことがわかる。

企業は「戦力化」を期待するいっぽうで、当事者側は「安心して働ける環境」を求めている。 もしこのギャップを放置すれば、本当の意味での「働きがい」のある環境は実現が難しくなるはずだ。

©パーソルダイバース株式会社

「対話」から生まれる最適な環境

では、企業と障害のある人が、互いに理解を深め、より良い関係を築いていくためには、何が必要だろうか。重要なのは、一方的な決めつけや押し付けではなく、お互いの想いやニーズを共有するための「対話」だろう。

企業は、障害者雇用を単なるCSR活動や法令遵守の手段と捉えるのではなく、企業文化や組織全体の成長に繋がる重要な取り組みとして位置づける必要がある。

そのためにも、まずは障害のある社員と積極的にコミュニケーションを図り、働きやすい環境や必要なサポートについて、共に考えていくことが重要。そのプロセスを経てこそ、企業と障害のある人が共に成長し、持続可能な社会を実現していくことができるのではないだろうか。

Top image: © iStock.com/Natee127
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。