76%が「自分がボスになりたい」──アルファ世代が変える“働く”の常識

カナダ・トロントの人材紹介会社IQ PARTNERSが公開したブログ記事が、次の労働力の主役となる「ジェネレーションアルファ」の価値観を鮮やかに描き出しています。2010年から2024年に生まれたこの世代は、「雇われること」をゴールとしない──そんな新しいキャリア観を、すでに芽吹かせているようです。

「就職」がゴールではない世代

ジェネレーションアルファとは、21世紀に完全に生まれた最初の世代のこと。オーストラリアの社会調査会社McCrindleが命名したこの世代名は、いまや世界中の人事・教育の現場で使われるようになりました。

彼らを語るうえで欠かせないのが、Visaの調査で示された一つの数字です。なんと76%が「自分自身がボスになること」または「副業(サイドハッスル)を持つこと」を志向しているとのこと。まだ多くが10代にも届いていない年齢でありながら、従来型の「就職して安定を得る」というキャリアモデルに対して、すでに別の選択肢を描いているわけです。

この傾向は、親世代であるミレニアル世代の影響も大きいのではないでしょうか。副業やフリーランスという働き方が社会的に認知され、YouTuberやクリエイターエコノミーが「職業」として成立する時代に育った子どもたちにとって、「雇われる」ことはもはや唯一の道ではないのかもしれません。

デジタルが「母語」である強み

IQ PARTNERSの記事では、Gen Alphaを特徴づける5つの要素が挙げられています。なかでも際立つのが「デジタル習熟度」です。スマートフォンやタブレットに囲まれて育った彼らにとって、テクノロジーの活用は「学んだスキル」ではなく「第二の天性」だと同記事は表現しています。

実際、同調査では40%がAI(人工知能)やVR(仮想現実)、スマートアシスタントといったテクノロジーが将来のキャリアに不可欠になると考えているという結果も出ています。Gen Zがデジタルネイティブと呼ばれてきましたが、Gen Alphaはさらにその先──AIネイティブとでも呼ぶべき感覚を持ち合わせているのかもしれません。

日本に目を向けても、総務省の情報通信白書が示すように、低年齢層のインターネット利用率は年々上昇しています。こうした環境で育つ子どもたちが労働市場に参入したとき、テクノロジーとの向き合い方そのものが、世代間で根本的に異なる可能性は十分にあるでしょう。

企業に求められる「共鳴」の設計

一方で、注意持続時間の短さや、テンポの速いコンテンツへの慣れといった課題も指摘されています。IQ PARTNERSの記事でも、Gen Alphaは前世代と比べて集中力が持続しにくい傾向があると述べられていました。

しかし、それは単なる「弱点」として片づけられるものでしょうか。むしろ、短時間で本質を見抜き、効率的に情報を処理する能力の裏返しとも捉えられます。OECDが推進する「Education 2030」プロジェクトでも、未来の教育に求められるのは知識の詰め込みではなく、自ら課題を発見し解決する力だとされています。Gen Alphaの「自律的な学習者」としての特性は、まさにこの方向と合致しているように見えます。

同記事は最後に、企業の成功はこの新世代を惹きつけ、採用する能力にかかっていると結んでいます。ここで重要なのは、従来の「選ぶ側」としての採用戦略が通用しなくなるかもしれないという視点です。多様性と包摂性を当然のものとして育ち、環境問題への意識も高いこの世代に対して、企業は「ポジションを与える」のではなく、「共に価値を生む関係」を提示する必要があるのではないでしょうか。

Gen Alphaが本格的に労働市場へ参入するのは、まだ数年先のこと。けれど、76%が「自分がボスになりたい」と答える世代の足音は、もうすぐそこまで来ています。その足音に耳を傾け、いまから準備を始めることが、未来の組織づくりにおける最初の一歩になるはずです。

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