研修中は「褒め」、現場では「指摘」が効く。新卒フィードバックの時期依存性

「褒めて伸ばす」が、いつでも正解とは限らない──そう聞くと、ちょっとドキッとしませんか。リーディングマークの組織心理研究所とアトラエのWevox R&Dチームが発表した共同研究が、新人育成の常識に小さな揺さぶりをかけています。

同じ新卒でも、時期で
「効くフィードバック」が逆転する

この研究は、2025年4月にある企業へ入社した新卒59名を、入社直後・研修2か月後・店舗配属3か月後の3時点で追いかけた縦断調査です。

注目すべきは、フィードバックの種類と効果が時期によってきれいに入れ替わった点。

研修期間中は、上司からのポジティブなフィードバック──つまり「よくできているね」という声かけが、「自分はこの仕事に必要な力を持っている」という感覚(研究では「能力適合感」と呼ばれています)と正の関連を示しました。

ところが現場に配属されたあとは、逆にネガティブなフィードバック──具体的な課題の指摘のほうが、この能力適合感を高める方向に関連していたのです。

しかも、配属後はその能力適合感の変化が、仕事への活力や熱意(ワーク・エンゲイジメント)にもつながっていました。

「ダメ出し」ではなく
「地図を渡す」という再定義

ここで大事なのは、「じゃあ現場では厳しく叱ればいいのか」という短絡に走らないこと。研究チーム自身もリリースの中で、そうではないと明確に釘を刺しています。

効果があったのは、人格への攻撃ではなく「具体的な行動」に対する指摘。さらに、その改善によってどんな能力が伸び、どんな成果につながるかまでセットで伝えること。

つまりネガティブ・フィードバックの本質は「ダメ出し」ではなく、「いま自分がどこにいて、どこへ向かえばいいか」を示す地図のようなもの。叱責と情報提供は、似ているようでまったく違います。

「いつ言うか」が
「何を言うか」と同じくらい重要

研修中はまだ業務の全体像が見えず、自信の土台が不安定な時期。そこでは「できているよ」という承認が支えになるのは自然なことです。

でも現場に出ると、自分の力と仕事の要求とのギャップが否応なく見えてくる。このフェーズでは「何が足りないか」を具体的に知ることが、むしろ前に進む手がかりになる──そんな構図が浮かび上がります。

もちろん、この研究は1社の営業職59名を対象にした観察研究であり、すべての職場に当てはまるわけではありません。能力適合感も本人の主観的な感覚で、実際のスキル向上を測ったものではない点も留意が必要です。

それでも、「褒めるか、指摘するか」の二択ではなく、「いつ、どう伝えるか」という時間軸の設計に目を向けさせてくれるこの知見は、新人を迎えるすべての職場にとってヒントになるのではないでしょうか。

かつて受けた厳しい一言が、振り返ると自分を動かしていた──そんな経験に、少しだけ理由が見えた気がします。

Top image: © iStock.com / Masafumi_Nakanishi
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