親の6人に1人が「スマホリタイア」。その原因は“ITへの苦手意識”ではなかった

「スマホの使い方、何度教えても覚えてくれない」。そんな経験がある人は少なくないはずです。でも、もしそれが「覚えられない」のではなく、身体が追いつかなくなっているのだとしたら——。

エイジテックスタートアップの株式会社チカクが2026年8月に公開した調査が、その実態を数字で浮かび上がらせています。

ひとり暮らしの親ができなくなったことの割合を年代別に示した表(遠出の旅行、車の運転、スマホの操作など)
© 株式会社チカク

「教えれば解決する」が
通用しない理由

スマホが使いにくくなった原因を示すグラフ。物忘れ、目や耳の衰え、手元の操作困難などが上位
© 株式会社チカク

調査は、ひとり暮らしの親を持つ50〜60代の男女198名を対象に行われました。

そこで明らかになったのは、ひとり暮らしの親の6人に1人(17.2%)が「スマホリタイア」の状態にあるという事実です。

ここで言う「スマホリタイア」とは、解約だけを指しません。加齢によって画面のタッチ操作がうまくいかなくなったり、機能の一部を諦めたりと、実質的にスマホを使いこなせなくなった状態も含みます。

そして注目すべきは、その原因です。最大の要因は「認知機能の低下」で61.8%。次いで「視力や聴力など身体機能の低下」が44.1%、「手元の操作が難しい」が35.3%でした。

つまり、「ITに疎いから」ではなく、車の運転や家事と同じように、身体の変化とともにスマホ操作も難しくなっていく。これは世代の問題ではなく、老いという誰にも訪れる変化の話なのです。

つながりが「一方通行」に
なっていく現実

スマホが使えなくなった後の親子の連絡手段の変化を示すグラフ。訪問や一方的な連絡への切り替えが上位
© 株式会社チカク

もうひとつ、この調査が映し出しているのは、スマホリタイア後に起きる「つながりの断絶」です。

スマホが使えなくなった後も「これまで通り連絡を取り合えている」と答えた人は、わずか35.3%。代わりに増えるのは「子どもから一方的に連絡する」(26.5%)や「直接実家を訪問する」(38.2%)といった手段でした。

90歳以上に限ると、85.7%が固定電話に頼り、半数以上が「子どもからの一方的な連絡」に依存しています。双方向だったやり取りが、いつの間にか一方通行になっている。

子世代の負担も見逃せません。「操作方法を繰り返し説明する」が67.6%、「連絡がつかないときの不安」と「誤操作による電話」がそれぞれ47.1%。親を思う気持ちが、じわじわと日常の重荷に変わっていく構図が浮かびます。

「自分は大丈夫」と
言い切れるか

興味深いのは、回答者自身に「自分が80〜90代になったとき、スマホを使い続ける自信はあるか」と尋ねた結果です。「ある」50.5%、「ない」49.5%——ほぼ真っ二つに割れました。

デジタルに慣れ親しんだ世代でも、半数は将来の自分に確信が持てない。これは「親の問題」であると同時に、私たち自身の未来の話でもあります。

2040年には、ひとり暮らしの高齢者世帯が1,000万を超えるとも言われています。「教えれば使える」という前提を手放して、身体の変化に寄り添う連絡手段を考える。そのタイミングは、思っているより早く来るのかもしれません。

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