「かわいい」が絶滅危惧種を救う。町工場発の「SUZU ZOO」

福岡県古賀市に拠点を置くアトラス化成が、自社ブランド「Tindustry」から展開するリサイクル錫100%の動物オブジェシリーズ「SUZU ZOO」。2026年8月より、二子玉川 蔦屋家電をはじめとするライフスタイルショップで本格的に販売が始まっています。

このプロダクト、ちょっと出自が変わっているんです。つくっているのは、いわゆる錫の工房でも伝統工芸の職人集団でもありません。食品容器や飲料キャップを手がけてきた、プラスチック成形メーカーです。

プラスチックと錫、融点が近い
40年の成形技術が「転用」された

Tindustryブランドのビジュアル。左に錫製の盃が整然と並ぶ様子、中央にグラスの中の錫のホッキョクグマ、右に錫製のリンゴを握る手。ロゴに『est. 2022 / KOGA / FUKUOKA / JAPAN / BEST QUALITY』の文字
© アトラス化成株式会社

アトラス化成は1984年の創業以来、40年以上にわたってプラスチック製品の開発・量産を担ってきた会社です。食品に触れる容器をつくるわけですから、求められるのは高い衛生基準と精密な寸法精度。いわば「正確に成形する技術」のプロフェッショナルです。

その技術者たちが、あるとき気づきます。プラスチックと錫は融点(素材が溶ける温度)が比較的近い、と。

であれば、自分たちが長年磨いてきた成形のノウハウを、まったく別の素材に応用できるのではないか。そこから約3年にわたる金型設計や成形条件の試行錯誤が始まりました。

動物の毛並みや表情、身体の細かな起伏まで再現するために、一体のオブジェを複数パーツの金型で構成し、成形後はひとつひとつ手作業で仕上げているそうです。

「かわいいから置きたい」が
絶滅危惧種への寄付につながる設計

さまざまなサイズのガラス花瓶に花やサボテンが生けられ、水中に錫の動物オブジェ(ゴリラ、パンダ、リクガメ、恐竜、ライオンなど)が沈められたSUZU ZOOの使用シーン
© アトラス化成株式会社

SUZU ZOOのモチーフになっているのは、ジャイアントパンダやホッキョクグマ、エジプトリクガメなど8種類の動物たち。いずれもIUCN(国際自然保護連合)のレッドリストで絶滅が危ぶまれている種です。

売上の一部はIUCNの活動に寄付される仕組みになっています。

ここで面白いのは、このオブジェが「社会貢献グッズ」のような顔をしていないこと。素材の錫は錆びにくく、水を清らかに保つ性質があるため、花瓶の中に沈めたり、洗面所に置いたりと、暮らしのなかで自由に使えます。

「かわいいから部屋に置きたい」という素朴な動機が、リサイクル素材の循環や絶滅危惧種への関心、さらにはIUCNへの寄付という社会参加に、自然とつながっていく。説教臭さのない設計が、このプロダクトの一番の魅力かもしれません。

黒子だった町工場が
自分の名前でブランドを持った

アトラス化成の工場前に並ぶ紺色の作業着姿のスタッフ7名の集合写真
© アトラス化成株式会社

2023年に立ち上げた自社ブランド「Tindustry」は、受託製造ひとすじだった中小メーカーが「自分たちの技術で何がつくれるか」を問い直した結果です。

日本のものづくりには、驚くほど高い技術を持ちながら、完成品には自社の名前が載らない企業がたくさんあります。SUZU ZOOは、そうした「黒子の技術」が表舞台に出てきた瞬間でもあります。

部屋の棚にちょこんと座っている錫のパンダが、実はプラスチック成形の精密技術から生まれたものだと知ったら。ものの見え方が、ほんの少しだけ変わる気がします。

SUZU ZOO

【取扱店舗】
・二子玉川 蔦屋家電|2026年8月1日〜9月30日
・SiCLE(広島県尾道市)|2026年8月13日〜8月25日
【オンラインショップ】Tindustry オンラインショップ(BASE)
【公式サイト】Tindustry

Top image: © アトラス化成株式会社
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。