初心者が7,000人殺到。レイオフ女性2人による「カニ釣りクラブ」って?
サンフランシスコの桟橋で、カニ釣りを楽しむ女性たちのコミュニティが急速に広がっています。「The San Francisco Standard」紙が報じたその名は「Baddies Who Crab」。わずか4カ月でInstagramフォロワー7,000人超という規模に膨らみました。
TikTokに「私もやりたい」が殺到した夜
創設者はリッサ・コエルツァーさんとハンナ・ゴメス・ファリアスさん。2人とも前年にレイオフ——いわゆる会社都合の解雇——を経験し、次のキャリアを模索していました。
2025年のクリスマスイブ、コエルツァーさんがゴメス・ファリアスさんをカニ釣りに誘ったのが転機です。その様子をTikTokに投稿したところ、「私もやりたい」「どこでできるの?」と画面の向こうから手が挙がり続け、コミュニティが自然発生的に生まれたのだそうです。
活動拠点はサンフランシスコのトーピード・ワーフという桟橋。参加費は無料で、経験も一切問いません。コエルツァーさんは同紙の取材に対し「私たちが作っているのは、失敗しても安心できる場所」と語っています。ガイドとして教える立場ではなく、自分たちも一緒に学んでいる最中だからこそ、初心者にとっての敷居が低いのだと。
釣りといえば、どちらかというと男性中心のイメージが根強いアウトドア文化のひとつ。そこに「女性およびノンバイナリーの人々が安心して参加できる場」を掲げたことが、多くの人の心に刺さったのかもしれません。毎回のミートアップでは、水域のルールや持ち帰ってよいカニの種類、釣りのエチケットを最初にしっかり共有し、そのあと全員で「Crabby Baddie!」と掛け声をかけて乾杯するのがお決まりの流れだといいます。
桟橋が混みすぎて、ルールを変えた
急成長には摩擦もつきものです。既存の釣りコミュニティからは「桟橋に人が多すぎる」との声が上がり、1回の参加人数を30人から20人に縮小。事前登録制に切り替えました。オンラインでは「カリフォルニア州の漁業規制を守っていないのでは」という批判も出ています。
ただ、同紙が土曜日のミートアップに同行取材した際、巡回中だったカリフォルニア州魚類野生生物局のワーデン(監視官)は、Baddies Who Crabの活動を「これまで十分に代表されてこなかったコミュニティに、新しいスポーツの世界を紹介している」と称賛したそうです。批判を受けて即座にルールを見直す姿勢と、行政からの評価。この両面があるからこそ、信頼が積み上がっているように見えます。
「やっと見つけた」と届いたメッセージ
コエルツァーさんは、あるメンバーから届いたメッセージを紹介しています。「何年もベイエリアに住んでいるのに、自分に合う人たちが見つからなかった。やっと見つけた」。彼女はこう続けました。「孤独のエピデミックは本当に深刻で、私たちが実際にインパクトを与えていることに一番驚いている」。
レイオフという、ともすれば社会との接点を失いかねない経験。そこから生まれたのが、誰かに何かを教える場ではなく「一緒に初めてをやってみる場」だったというのが、このコミュニティの一番の魅力ではないでしょうか。
日本でも、コロナ禍以降「ゆるいつながり」を求める動きは確実に増えています。サウナ、ランニング、朝活——共通するのは、目的が「上達」ではなく「そこにいること」自体にある点。桟橋でカニを待つ時間に、隣の人と何を話すか。そこにこそ、本当の「釣果」がある気がします。






