タコを使わない「ほぼタコ」誕生。漁獲量5分の1時代の新しい選択肢
お祭りの夜店で食べるたこ焼き、居酒屋のタコ唐揚げ、スーパーのタコ入りチャーハン——私たちの食卓にごく当たり前にいた「タコ」が、いま静かに手の届かない食材になりつつあります。
漁獲量10年で5分の1、「本マグロに迫る」価格の現実

兵庫県明石市といえば、「明石ダコ」で知られる国内屈指のタコの産地です。
ところが、その明石をはじめとする国内主要産地では、タコの漁獲量が過去10年間で約5分の1にまで落ち込んでいます。
卸売価格は1kgあたり3,000円前後。業界では「本マグロに迫る価格になった」とも言われるほどです。
背景にあるのは、主要産地の不漁だけではありません。世界的にタコの需要が高まり、供給と価格の両面で綱引きが起きています。
その結果、飲食店や冷凍食品メーカーでは「タコを使いたいけれど、コスト的にもう採用できない」というケースが増えているそうです。
100年の練り物技術が生んだ「ほぼタコ」という回答

この状況に対して、ひとつの答えを出したのが、神戸に本社を置くカネテツデリカフーズ。2026年3月に創業100周年を迎えた老舗の魚肉練り製品メーカーです。
同社が発表した新商品「業務用 ほぼタコ®」は、タコを一切使わずに、本物のタコのような弾力と見た目を再現したもの。しかも動物性原料も魚介エキスも不使用のプラントベース食品です。
加熱・調理しても食感が崩れにくく、たこ焼きやチャーハン、唐揚げなど幅広いメニューに対応できるといいます。
実はカネテツには「ほぼシリーズ」という看板商品群があります。2014年に発売した「ほぼカニ®」を皮切りに、ホタテ、エビフライ、うなぎ、いくらなど10種以上を展開。2025年2月時点でシリーズ累計1億パックを突破しています。
それぞれの商品が、水産資源の保護や価格高騰、アレルギー対応といった「食の困りごと」に向き合ってきました。「ほぼタコ」もその延長線上にあります。
「代用品」ではなく「新しい選択肢」


「ほぼタコ」を単なる“タコの代用品”として見るのは、少し違うのかもしれません。
漁獲量が減り、価格が上がり続けるなかで、これまでと同じように天然の水産資源だけに頼り続けることは難しくなっています。一方で、「たこ焼きを食べたい」「タコらしい食感を楽しみたい」という需要そのものがなくなるわけでもありません。
そこで、本物を完全に置き換えるのではなく、用途やシーンに応じて別の選択肢を持つ。「ほぼタコ」が提案しているのは、そんな食との付き合い方です。
100年培ってきた練り製品の技術から生まれた“タコを使わないタコ”。それは、価格高騰への対策であると同時に、限りある水産資源と食の楽しみをどう両立していくか、その問いに対するひとつの答えなのかもしれません。






