世界中の人から愛される色「タータン」の秘密を知っていますか?
スコットランド生まれの、タータン。マフラー、シャツ、スカートなどにも採用される人気の柄ですが、そこには私たちが知らないストーリーがありました。
色にまつわる、さまざまなトピックをまとめた書籍『色で巡る日本と世界 くらしの色・春夏秋冬』より、その秘密に迫りたいと思います。
ルーツは紀元前50年まで
さかのぼる!?
現在、タータンは世界的なファッション素材としてオシャレの定番となっていますが、元々スコットランド北部のハイランド(高地)の人々が纏っていた布地で、経糸と緯糸を同じルールで繰り返してできる「チェック柄の毛織物」のこと。
歴史は定かでありませんが、紀元前50年頃、古代ローマ軍が古代ブリテンに攻め込んだとき、その地にいたピクト族が格子柄の布地を纏っていたとの記述があり、すでにタータンに似たものが存在していたことがわかります。
現存するスコットランド最古のタータンは、1943年にフォルカーク付近で出土した布切れで、3世紀にケルト系民族が織ったものとされています。当時はソーイエ種の羊毛を染色せずに用いた、焦げ茶と明るい緑がかった茶色の単純な格子柄でした。
ケルト系民族の衣装は、プラッドという長方形の布で、男性は膝丈、女性はくるぶしが隠れるほどの長さを纏っています。女性用のプラッドはアリセド(肩掛け)と呼ばれ、男性用よりも格子が小さく、地色に明るい色が使われていたそうです。正式な儀式のときには、男性は女性のスカートに似た「キルト」という衣装を着用しました。
ちなみに、タータンが広く知られるようになったのは、ハイランドの兵士たちが揃いのタータンを着て活躍した18世紀頃のことです。
「タータン」と言っても
色々ある
タータンは目的や用途によって幾つもの種類に分けられていて、たとえば、氏族(クラン)が纏ったものはクラン・タータンと呼ばれ、その代表的なものに、ダーク・グリーンを基調としたグリーン・タータンとレッドを基調としたレッド・タータンがあります。
クランの数は300以上あり、氏族長が認め「スコットランド紋章院」に登録されたものが正式なクラン・タータンと認められるのです。
その他にも、以下のような種類があるのです。
ロイヤル・タータン
スコットランド王室のタータン。最も知られるロイヤル・スチュアートは、赤字に緑と青の中細ライン、黄と白の細ラインで構成。
ドレス・タータン
白を基調とした女性のためのタータン。
ミリタリー・タータン
軍用のもの。連隊の呼び名に由来する「ブラック・ウォッチ」は緑、青、黒を基調。
ハンティング・タータン
狩猟用のもの。自然になじむ黒や茶色を基調としたものが一般的で、クラン・タータンの暗い色はこの用途にも使われていました。
モーニング・タータン
喪に服すときに使われるタータン。一般には黒と白で構成され、ドレス・タータンとしても使われていました。