血や涙が緑色?「古代ギリシャ人」の色彩感覚が想像を超えていた・・・
「はじめに、君たちに言っておきたいことがある。『ギリシャといえば、青い海、白亜の神殿!』なんてイメージは幻想だ。古代ギリシャ人は海をワイン色と表現する。そして古代ギリシャ語には元々『青』や『海』を表す単語もなかった」
そんな衝撃的な内容から始まる書籍が『古代ギリシャのリアル』です。冒頭の文章は、著者でありギリシャ神話研究家の藤村シシンさんが、研究室の門を叩いたときに先生からぶつけられた言葉だそう。
ここでは、世界史の教科書や哲学書のイメージとはひと味違う、古代ギリシャの本当の姿を紹介していきましょう。
血や涙を「緑色」と表現したナゾ
「ワイン色のエーゲ海」「ワイン色の羊」「緑色に滴る血と涙」
これらは、古代ギリシャ人が使う色彩表現ですが、とても奇妙な表現に感じませんか?なぜ海を青ではなく、ワイン色と表現するのか?血や涙がどうして緑色に見えるのか?
この答えとしては、まず「色」の概念のちがいが挙げられます。私たちにとって「色」といえば第一に色相のちがい(赤、黄、緑、青など…)ですが、彼らにとっては「明るいか、暗いか」「白いか、黒いか」といった明度や彩度のちがいのほうが大きかったのです。そのため虹の色のちがいにも鈍感だったのだとか。
「紫」は流れたり動いたりするもの?
古代ギリシャ人が表現する「色」は、物のうわべや表面的な色ではなく、質感やそれ自体が持つ性質を表すのだそうです。
例えば「緑色」は、豊かさやみずみずしさ、生命力を持つもの全般に使います。朝露、涙、血、汗、手足などもそうですね。
また「紫色」は、流れたり動いたりするもの。海や打ち寄せる波は紫色なのです。つまり「ワイン色のエーゲ海」は、「波が打ち寄せるエーゲ海」を意味します。
このように、彼らは色の中にもさまざまなものを見ていました。じつはこれらは、私たちも使っている表現方法で
・真っ赤な太陽
・青々とした木々
・黄色い声援
などは、実際に見えた色ではなく、色の持つイメージを言語化したものですよね。
なぜ古代ギリシャ人は血や涙を「緑色」と表現するのか?なぜ古代ギリシャの主神ゼウスはあんなに浮気性なのか?そして「壺絵の落書きにみる同性愛」に至るまで、ネットやツイッターで大人気の著者、藤村シシンが詳細かつ面白く解説。青い海、青い空、白亜の神殿、ロマンチックな神話といった、私たちが日ごろイメージする古代ギリシャとはちょっと違う「リアル」がわかる一冊。(定価:本体1500円+税)