迷走するギリシャ:「週6日労働」導入で国民は混乱
現在、世界各国で労働時間の短縮がトレンドだ。
ベルギーは2022年に、従業員に週4日労働の法的権利を与える法律を制定し、英国、ドイツ、南アフリカ、そして日本においても試験的な制度が実施されている。
ところが、ギリシャはその「逆」を行くようだ。
時代に逆行する「週6日労働」
目指すは生産性向上
『The Guardian』誌によると、キリアコス・ミツォタキス首相率いる企業寄りのギリシャ政府は、人口減少や熟練労働者不足といった同国が抱える危機的状況を「週6日労働」を許可する法律を採用することで解決しようとしているようだ。
なんでも、同法律は24時間サービスを提供する民間企業に適用されるそうで、2時間と8時間の追加勤務が選択可能。報酬として日給に40%が上乗せされるらしい。
2009年後半に債務危機が勃発して以来、前例のない労働力の大量流出に直面しているギリシャ。おもに教育を受けた若い世代の流出に歯止めがかからず、およそ50万人が国外に移住したと推定される。
今月はじめより施行された「週6日労働」に対し、労働組合は“野蛮”であると非難を向ける。また、すでに街頭では反対派による抗議デモが発生しているとも聞く。
「まったく意味が分からない。多くの文明国が週4日労働を導入し始めているのに、ギリシャは逆の道ぶなんて」とは公務員組合の執行委員Akis Sotiropoulos氏の弁。政府の決断への嘆きをThe Guardianの取材に漏らした。
こうした国民の反応をよそに、ミツォタキス首相は「法律の核心は労働者に優しく、ギリシャの経済成長を促し、欧州諸国と足並みを揃えるものである」と力説したようだが……。その実、ギリシャは欧州最長の平均労働時間(週平均41時間)を記録しているにも関わらず、平均給与は日本のおよそ半分程度といった状況。
成長志向の「週6日労働」ということは理解しつつも、さらなる“国離れ”を招く恐れもあるだろう。