古代ギリシャ人が予言していた「世界の破滅」が意外な内容だった・・・
「昔は良かった…」「それに比べて今は…」「世の中悪くなる一方だ…」とは現代の私たちもよくボヤきますが、2800年前の古代ギリシャ人もまったく同じことを言っていたそうです。
ギリシャ神話研究家である藤村シシンさんの著書『古代ギリシャのリアル』では、これまでの世界史の教科書や哲学書のイメージとはひと味違う、古代ギリシャの本当の姿が見えてきます。今回は、彼らが考えていた「世界の破滅」について。
「明らかに人間の質が低下している!」
古代ギリシャ人は、地球全体がどんどん衰えて破滅に向かっている、と考えていました。その根拠は…
「だって昔に比べて人間のサイズが縮み、明らかに人間の質が低下しているからだ!」
というものでした。
古代ギリシャの男性の身長は平均165cmほどなので、今と比べると少し低いですが、偉大な過去の(ギリシャ神話の中の)英雄たちは、今の人間よりもずっと体が大きく、強かったと考えられていたのです。
「今どきの人間なら二人がかりでも持ち上げられないと思われるほどの大岩を、英雄ディオメデスはひとりで軽々と振り回した*」というように…。
(*『イリアス』第5歌305行目以下)
意外な「終末の日」
そして今の私たちがイメージする「世界の破滅」というと、空からバンバン隕石が降ってきたり、突然に氷河期がやってきたり、もしくは核戦争で地上は灰に包まれてしまったり、というパターンではないでしょうか。
しかし、古代ギリシャ人の考える「終末の日」は、ちょっと意外なものでした。
「父は子と、子は父と心が通わず、客は主人と、友は友とおりあわず、兄弟同士も昔のように親密な仲にはならない。
親が年をとれば、子はこれを冷遇し、罵詈雑言を放ってそしるようになる。
年老いた両親に、育ててくれた恩義に報いることもしない。
そして強い者こそが正しいと考える輩によって、互いの国を侵しあう日が来るだろう。
力が正義となり、『恥』という美徳は失われる。……
そうなれば人間には、悲惨な苦悩のみが残り、災難を防ぐ術もなくなるだろう」
(※ヘシオドス『仕事と日』松平千秋訳181行目以下より一部意訳と抜粋)
これを読むと分かるように、古代ギリシャ人にとっての「破滅の日」とは、自然災害だとか、技術の進歩だとかによってもたらされるものではありませんでした。
それは人間の心から「モラルが崩壊する日」のことだったのです。
なぜ古代ギリシャ人は血や涙を「緑色」と表現するのか?なぜ古代ギリシャの主神ゼウスはあんなに浮気性なのか?そして「壺絵の落書きにみる同性愛」に至るまで、ネットやツイッターで大人気の著者、藤村シシンが詳細かつ面白く解説。青い海、青い空、白亜の神殿、ロマンチックな神話といった、私たちが日ごろイメージする古代ギリシャとはちょっと違う「リアル」がわかる一冊。(定価:本体1500円+税)