じつは七色じゃない?「虹」にまつわる意外なお話。
雨上がりに空に現れる、7色の虹。
現在、虹(レインボー)といえば7色が全世界共通ですが、じつは時代や国によって認識が違っていたのです。
書籍『色で巡る日本と世界 くらしの色・春夏秋冬』を読むと、いかにして虹が7色に数えられるようになったのか、さらに国ごとの色の呼び方や数の違いがまとめられていました。
ちょっとオドロキです。
そもそも「虹」って
なにもの?
虹は、空気中の水滴で太陽の光が分光されて起こる、光学的な現象です。一見透明な太陽光ですが、じつは様々な色の光で構成されていて、ちいさな雨粒に当たると屈折や反射をし、波長ごとに方向を変え、虹を作り出します。
比較的観察しやすい主虹の色は、外側から内側へ赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の順ですが、その上にかすかに見える副虹は、この逆に並びます。
旧約聖書・創世記の『ノアの方船』では、大洪水後の場面で、神が空に虹を架けます。これは神の許しと愛のメッセージであり、神と人との永遠の契約を象徴するとされました。
また、シェイクスピアの戯曲『ジョン王』では「虹の七色にさらに一色を加えるのは無駄で滑稽で余計なこと」という台詞があり、虹が完全無欠の象徴であったことがうかがえます。
厳密に言うと
「7色」ではない?
先ほど、虹の色は7色であるかのように述べましたが、実際はグラデーションで、色を個別に捉えることは困難です。そのため、時代や地域によって、色名が異なります。
たとえば奄美では赤と青の2色、キリスト教では青・赤・緑、アリストテレスは赤・緑・青に加えて、2次的に他の色が現れる場合がある、と述べています。
また、イスラム教では四大元素に対応する赤・黄・緑・青とされ、イギリスの伝承童謡『マザー・グース』には紫・黄・赤・緑の4色が登場。司馬江漢は『和蘭天説』で、黄色・紅色・緑色・紫色・青色と記述していて、鎌倉幕府のことが書かれた『吾妻鏡』では、「五色の虹」に、赤色と紅梅を別の色として見出しています。
一方、青との微妙な差のためか、藍を欠いて6色とする地域も。このように、地域によって様々な解釈があるのです。
「7色の虹」と
「7音階」の意外な関係とは?
文化や言語で見ると、色相はどのように区別されてきたのでしょうか。たとえば、虹を2色と見る文化では、赤から黄の色相と、緑から青、紫への色相とを2分割で表現しています。ヨーロッパではキリスト教の三位一体の「3」、中国では五行説の「5」といった数による分類体系の影響も指摘されています。
17世紀イギリスの物理学者アイザック・ニュートンは、太陽光をプリズムで分光し、虹色のスペクトルを得ました。当時、数学や天文学と並んで音楽が権威ある科目だったため、著書『光学』でも7つの音階を意識して、虹を7色と述べたとも考えられます。
虹を7色とする考えが世界的に広まったのは、この『光学』発売以降のことなのです。