飯塚発の医療ウェア「sukui」が国際3冠。CO2まで見える服の新常識

病院で着るスクラブに、環境データの「履歴書」がついている——そう聞くと、少し未来の話に思えるかもしれません。
でもそれは、福岡県飯塚市の中小企業がすでに実現し、国際的なデザイン賞3つで認められた「いまの話」です。

黒いスクラブを着た男女が背中合わせに座るsukuiのブランドビジュアル
© 飯塚市役所

1着ごとにCO2の収支が
QRコードで読める仕組み

タブレットとスマホに表示されたNew Age Hemp Scrub TopsのCO2排出量6.15kgと吸収量12.49kgのデジタル製品パスポート画面
© 飯塚市役所

サステナブル医療ウェアブランド「sukui(スクイ)」を手がけるのは、1978年に福岡で創業した業務用ウェアメーカー、株式会社ワーキングハセガワ。

このブランドの最大の特徴は、素材にヘンプ(麻の一種)を使っていることだけではありません。製品ラベルに印刷されたQRコードを読み取ると、「デジタル製品パスポート(DPP)」と呼ばれるデータページにアクセスできます。

そこには、その1着をつくる過程で排出されたCO2の量と、原料のヘンプが栽培中に吸収したCO2の量が記録されています。たとえばヘンプ100%のスクラブトップスの場合、CO2排出量は6.15kg、吸収量は12.49kg。つくる過程で出した以上のCO2を、素材が育つ段階で吸っている計算です。

しかもこのデータは、飯塚市内に拠点を置くブロックチェーン企業・chaintopeの技術で記録されており、あとから数字を書き換えることが極めて難しい設計になっています。「うちはエコです」と言うだけでなく、証拠ごと見せる。その透明性が評価されました。

「グリーンウォッシュ」が
疑われる時代の回答

近年、環境に配慮しているように見せかけて実態が伴わない「グリーンウォッシュ」が世界的に問題視されています。EUでは2027年以降、衣料品にもデジタル製品パスポートの導入が段階的に求められる見通しです。

sukuiが先駆けて取り組んでいるのは、まさにこの「証明つきの環境配慮」。グッドデザイン賞2025(日本)、iF DESIGN AWARD 2026(ドイツ)、Green Product Award 2026(ドイツ)という国際3冠は、デザインの美しさだけでなく、この仕組みの先進性が認められた結果です。

地方の中小企業が
世界基準をつくる可能性

Green Product Award Winner 26の授賞式でスクイのメンバーが登壇し賞を受け取る様子
© 飯塚市役所

興味深いのは、この取り組みが東京やシリコンバレーではなく、人口約12万人の飯塚市から生まれたことです。ブロックチェーン技術を提供するchaintopeも同じ飯塚市内の企業で、福岡県と飯塚市の補助金を活用した産学官連携の成果でもあります。

長谷川伸一社長はグッドデザイン賞受賞時に「国内で評価をいただけたことを励みに、今後は海外のアワードにも挑戦し、グローバルに認められるブランドを目指したい」と語っていました。その言葉どおり、ドイツの2賞を獲得して国際3冠に。

私たちが毎日着る服の「環境コスト」は、ふだんほとんど意識しません。でも、QRコードひとつでそれが丸見えになる時代は、もう始まっています。最初にその扉を開けたのが、医療現場の白衣だったというのは、なかなか痛快な話ではないでしょうか。

Top image: © 飯塚市役所
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。