電子レンジで使える漆器。「URUSHICA」が変える、伝統工芸のこれから

漆の器は美しい。でも「レンジが使えない」「食洗機もダメ」と聞いた瞬間、棚の奥にしまう未来が見えてしまう——そんな心理的距離を、伝統の純度を一切下げずに取り払った漆器が生まれました。

赤・緑・黒の3色の多用椀が並ぶ写真
© 株式会社ZOZO

「足す」ために「削る」が、
これまでの常識だった

URUSHICAの多用椀・深鉢・片口酒器・猪口の全ラインナップが並ぶ写真
© 株式会社ZOZO

伝統工芸品に現代的な機能を加えようとすると、たいてい何かを手放すことになります。耐熱性を得るために化学塗料の下地を挟む、量産のために機械塗装に切り替える——つまり「機能の追加=手仕事の後退」という等式です。

ZOZO NEXTと、福井県鯖江市で約230年にわたり越前漆器をつくり続けてきた漆琳堂が共同開発した「URUSHICA(うるしか)」は、この等式をひっくり返しました。

化学塗料を一切使わず、天然漆だけで耐熱樹脂への密着を実現。職人が刷毛で一つひとつ漆を塗り重ねる伝統技法はそのままに、電子レンジ(500Wで2分まで)と食器洗浄機の両方に対応する漆器を完成させたのです。

アパレルECの技術部門が、
漆の「素地」に踏み込んだ理由

多用椀・深鉢・片口酒器・猪口をそれぞれ用途別にグルーピングして並べた写真
© 株式会社ZOZO

意外なのは、この技術課題を解いたのがファッションテック企業であるZOZO NEXTだったこと。同社は「ZOZO研究所」などの研究機関を持ち、素材と身体の関係を探る技術的な蓄積があります。

一方の漆琳堂は、1793年創業で大本山永平寺御用達の漆塗師屋。「100年先も漆を塗り続ける」をビジョンに掲げ、食洗機に耐える独自の「越前硬漆」の研究も重ねてきました。

2025年2月に始まった共同研究は、漆の美しさと職人の手仕事を守りながら、現代の台所家電と共存できる技術を探るもの。2026年1月のクリエイティブフェスティバル「TOKYO PROTOTYPE」でプロトタイプが初公開され、耐久性の検証を経てこの夏、製品化に至りました。

「特別な日の器」から、
毎朝の味噌汁の器へ

黒・緑・赤の片口酒器が横一列に並ぶ写真
© 株式会社ZOZO

URUSHICAが変えたのは、漆器の「使い方」だけではありません。漆器そのものの居場所を変えたのだと思います。

正月やお祝いの席でだけ登場する「特別な器」ではなく、朝の味噌汁を温め直してそのまま食卓に出せる「毎日の器」。猪口で熱燗をつけてそのまま口に運ぶ——そんな使い方が、化学塗料なしの天然漆で成り立つのです。

ZOZO NEXTが展開するプロジェクト「呼色(よびいろ)」は、「機能性や数値では測れない、感じるための価値」を各地の工芸と協業しながら模索する取り組みです。漆器を日常に引き戻すことが、1,500年続く越前漆器の次の100年をつくる。URUSHICAは、その最初の一手なのかもしれません。

URUSHICA(うるしか)

【ラインナップ・価格(税込)】多用椀 14,850円/深鉢 20,350円/片口酒器 14,300円/猪口 10,450円
【販売形態】受注生産(注文確定後、製作完了次第の出荷。届け日の指定不可)
【販売】呼色(よびいろ)公式サイトにて受注販売中

Top image: © 株式会社ZOZO
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