猫458匹が決めた新しい爪とぎ。nyansの「猫に聞く」商品開発
ペット用品の開発で、メーカーが「自分たちでは決められません」と手を挙げることは、あまり聞いたことがありません。福岡発の猫用品ブランド「nyans」が、爪とぎの新モデルの仕様を猫たちの使用データで確定させるという、ちょっと変わった商品開発の結果を発表しました。
人間が決められなかった仕様を、
猫の「行動」に委ねる

nyansは「人間の都合ではなく、猫を中心に考える」を掲げる会社です。代表猫の名前がチェルシーという時点で、その本気度が伝わってきます。
同社の主力製品「つめまる」は、やすりを内蔵した爪とぎ。猫がいつも通り研ぐだけで、爪先がやすりに触れて自然と丸くなる仕組みです。
2026年2月の発売以降、累計1万台以上を販売。一方で「うちの子は使ってくれなかった」という声も届いていました。
飼い主439人へのアンケートから浮かんだ仮説は2つ。「やすりの白い色を警戒しているのでは」と「研ぎたい場所にやすりが届いていないのでは」。
色の問題は、保護猫カフェや社内の猫スタッフに試してもらい、白から本体に近い茶色へ変更することで解決しました。
しかし、やすりの配置は違いました。真ん中で研ぐ猫もいれば、端っこ専門の猫もいる。人間がどちらかに決めてしまえば、片方の猫を切り捨てることになります。
そこでnyansが選んだのは、猫に聞くことでした。
56.4%対43.6%を
「猫の総意」にしなかった誠実さ

2026年8月、同社は「第一回nyans(猫たち)審議会」を実施。やすり8本を均等に配置した「タイプA」と、片端と中央に4本ずつ寄せた「タイプB」の2種類を製作し、222世帯に審議員セットとして販売しました。
注目すべきは、これが無料モニターではなく購入制だったこと。飼い主は消費者ではなく、お金を払って仕様決定に参加する当事者になったわけです。
206世帯、458匹以上の猫から集まった結果は、タイプAが56.4%、タイプBが43.6%。事前の約束どおり、タイプAが新モデル「つめまる2」に採用されました。
ただ、ここからがこの会社らしいところです。nyansはこの結果を「猫の総意」とは呼びませんでした。
自由回答を分析すると、猫が研ぐ位置は体の大きさや乗り方で個体ごとに決まっていて、配置の好みというより「たまたまその位置にやすりがあったかどうか」で使用率が変わっていたのです。
「最適解」を出さないという選択

普通の商品開発なら、多数決で勝った仕様を正解として量産し、話は終わります。でもnyansの代表取締役・谷口紗喜子氏は「猫によって好みが違うということがわかった」とコメントし、今後もやすりの位置が異なるモデルを出し続けると宣言しています。
つまりこの審議会は、ひとつの正解を見つけるためではなく、正解がひとつではないことを確認するために開かれたようなものです。
「10年先も、猫に聞き続ける会社でいたい」という言葉には、効率よりも対話を選ぶ覚悟がにじんでいます。うちの猫が何を考えているか分からないと感じたことのある人なら、この姿勢に少し救われるのではないでしょうか。
つめまる2
【発売日】2026年9月16日(水)12:00
【価格】税込6,980円
【初回生産】2,222台限定(手作業製造のため)
【変更点】やすりの色を白から茶色へ変更、やすり配置を8本均等配置に変更
【購入】nyans公式オンラインストア、楽天市場店、Amazon店、Yahoo!ショッピング店
【開発部員登録】nyans公式LINEにて受付中






