その「ふーふー」、猫がお手伝い!開発5年、食卓を“ユカイ”にする猫型ガジェットの全貌

熱いものを口にするたび、反射的に繰り返される「ふーふー」という行為。多くの人が日常で体験するこのささやかな仕草に、ある日本企業が5年の歳月をかけてユニークな解決策を提案しようとしている。

それが「猫舌ふーふー」。

食卓にちょこんと現れたこの小さな猫型ガジェットは、私たちの食事シーンにどのような変化をもたらすのだろう。

猫が-15℃の吐息
話題の「猫舌ふーふー」開発秘話と驚きの機能

猫がモチーフの食卓コミュニケーション・トイ「猫舌ふーふー」は、包装容器のパイオニアである東洋製罐グループホールディングス株式会社(以下、東洋製罐グループ)と、「ロボティクスで、世界をユカイに。」を掲げるユカイ工学株式会社(以下、ユカイ工学)の異色のタッグによって生み出された。

愛らしい猫型トイは、食器の縁に取り付けることで、熱い食べ物や飲み物を小型ファンで冷却。わずか3分間の使用で約-15℃もの冷却効果を発揮するという。まるで猫が優しく息を吹きかけてくれるかのようなその動きは、単に風を送るだけでなく、自然な冷まし方を追求した「ふーリズム」というランダム送風モードも搭載するこだわりようだ。

このユニークな製品のアイデアは、東洋製罐グループのイノベーションプロジェクト「OPEN UP! PROJECT」から生まれた。同グループによると、企画の原点は「子育て中の家族や、猫舌で苦労している大人など、熱いものを“ふーふー”する行為そのものをなくしたい」という純粋な願いから。 従来の主力であった温める技術に対し、「冷ます」という新たな挑戦に踏み出した同グループと、人の心に寄り添うロボット開発を得意とするユカイ工学の出会いが、5年という時間をかけてこのコンセプトを形にした。

©東洋製罐グループホールディングス株式会社

「かわいい」だけにあらず!
ユカイ工学のDNAと異業種コラボが生む価値

「猫舌ふーふー」の魅力は、その実用性だけにとどまらない。開発を担ったユカイ工学は、これまでに多くの人の心を掴むコミュニケーションロボットを世に送り出してきた。

代表作である尻尾のついたクッション型セラピーロボット『Qoobo』は、全世界で4万匹以上が出荷され、国内外で高い評価を得ている。ほかにも、あまーく、かまれる『甘噛みハムハム』や脳波で動く『necomimi』など、ニッチでありながら的を得たプロダクトを世に送り出してきた。それらプロダクトに一貫しているのは、機能性だけでなく、使う人が思わず笑顔になったり、愛着を感じたりするような「情緒的な価値」の追求ではないだろうか。

今回の「猫舌ふーふー」も、その哲学を色濃く反映している。猫をモチーフにした愛らしいデザインは、単なる道具としてではなく、食卓の雰囲気を和ませ、会話のきっかけを生み出すコミュニケーションツールとしての役割も期待される。それは、テクノロジーが生活に溶け込み、人の心に豊かさをもたらすという、同社が描く未来の一端を示しているのかもしれない。

食のバリアフリーから、QOL向上へ
小さなロボットが見据える大きな未来

ところで、「猫舌ふーふー」が解決しようとしている猫舌という悩みは、実は多くの人が抱えているようだ。

あるアンケート調査では、「「猫舌だ」「どちらかというと猫舌だ」と回答した人が合計で51%と過半数を超え」、また10,206人が参加したLINEリサーチによる調査でも、全体の47%が猫舌であると回答している。こうした潜在的なニーズの大きさを考えると、この製品が持つ可能性は個人の食卓だけに留まらない。

東洋製罐グループが視野に入れるBtoB展開は、特に注目に値する。たとえば、深刻な人手不足が課題となっている介護現場。厚生労働省の試算では40年までに約57万人の介護人材が不足するとされ、政府も介護テクノロジーの導入率を23年の29%から29年には90%へと引き上げる目標を掲げている。 熱い食事が困難な高齢者や、介助者の負担軽減に、「猫舌ふーふー」のような製品が貢献できる場面は少なくないはずだ。

同様に、飲食業界もまた、人手不足という大きな課題を抱えている。帝国データバンクの24年7月の調査では、飲食業界の非正社員の人手不足割合は67.5%と、全業種平均の28.8%を大幅に上回る。こうした状況下において、「猫舌ふーふー」はユニークな顧客体験の提供や、話題性による集客効果など、新たな付加価値を生み出すかもしれない。

日常の小さな「困った」を出発点としながらも、その愛らしい存在感と確かな機能性によって、私たちの生活をより豊かに、そしてより優しいものへと変えていく可能性を秘めた「猫舌ふーふー」。テクノロジーがもっと身近に、もっと人の心に寄り添う。そんな未来を、この小さな猫が運んできてくれるのかもしれない。

さて、一般販売は、ユカイ工学が2025年6月下旬から、東洋製罐グループは飲食店などへのBtoB展開を予定している。

©東洋製罐グループホールディングス株式会社

猫舌ふーふー

【プロジェクトページ】https://nekojitafufu.ux-xu.com/

Top image: © 東洋製罐グループホールディングス株式会社
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