いい波は、必ず来る。何にも縛られない、自由な旅に出よう―本田直之
本田 直之/Naoyuki Honda
レバレッジコンサルティング株式会社代表取締役社長兼CEO|サンダーバード国際経営大学院経営学修士(MBA)|明治大学商学部産業経営学科卒|(社)日本ソムリエ協会認定ワインアドバイザー|アカデミーデュヴァン講師|明治大学・上智大学 非常勤講師
東京、ハワイに拠点を構え、年の半分近くをハワイで生活するデュアルライフをおくっている。
シティバンクなどの外資系企業を経て、バックスグループの経営に参画し、常務取締役としてJASDAQ上場に導く。
現在は、日米のベンチャー企業への投資事業を行うと同時に、少ない労力で多くの成果をあげるためのレバレッジマネジメントのアドバイスを多数の企業へ行う。
著書に、レバレッジシリーズをはじめ、『Less is More 自由に生きるために、幸せについて考えてみた。』『ノマドライフ 好きな場所に住んで自由に働くために、やっておくべきこと』など、多数。
講演活動は国内だけでなく、海外でも行っており、学生向けにも様々な大学で講演を行っている。さらに、ペンケースのプロデュースやワインスクールの講師も務めるなど幅広い活動を行っている。
また、経営者を中心としたトライアスロンチーム、Team Alapaを主宰する。走ることを通じて寄付を呼びかけるプロジェクトRun for Charityで2010年12月5日IRONMAN西オーストラリアにチャレンジし、11時間55分09秒で完走した。
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※本田さんの住む、ハワイ
※IRONMAN Melbourne 2013にて
001.
アメリカで受けた衝撃。デュアルライフを始めたきっかけ
今のハワイと東京を往復するデュアルライフを始めるに至った経緯を教えてください。
就職、転職、留学、上場などを経て、レバレッジコンサルティングを始めた2004年からハワイと日本を往復する生活を始め、2007年ハワイに軸足を置いたデュアルライフが完成しました。学生時代から漠然と今のような生活がしたいと思っていて。もともと仕事や場所、時間、考え方、服装など、すべて自由にやりたいし、何かに縛られたくはなかったんです。でも当時はインターネットや携帯電話もなく、航空券も高かった。まさかこんな自由に生きられるなんて思いもしなかったですね。
具体的にデュアルライフを考えだしたのは、アメリカへの留学中でした。留学先のアリゾナ州は、冬は温暖な代わりに夏は50度に達することもあるほど猛烈に暑い地域。だから夏は涼しいオレゴン州などの北部で暮らし、冬にアリゾナ州に住むという人がけっこういたんです。衝撃でしたよ!「一カ所に住み続けなくていいんだ」「心地いい時に、心地いい場所で暮らす人生もあるんだ」と思えた瞬間、それがとても魅力的な人生に思えたんですよね。
002.
面白いものは、多様性から生まれる
なぜハワイだったのですか?
気候や自然が好きなのはもちろん、サーフィンを楽しめるなどということもありますが、とても多様性に富んだ島だからです。例えば、ハワイはアジア系の人口が 56.9%を占め、10%のハワイアンを含めいわゆるマイノリティーの人口が80%を占め、様々な民族や人種が交じりあっています。また、食文化から見てもハワイアン、チャイニーズ、ジャパニーズ、コリアンなど、様々な文化がミックスされ生まれたハワイ独自の食べ物はとてもおいしいです。元来、先住民族のインディヘナがいた地域、ペルーも同じ。スペインが植民地化した影響でイタリア人やアフリカ系の人々も流入し、さらに日本人や中国人なども移り住み、とても豊かな食文化が育まれ、今世界中から食で注目されています。
人種や食に限らず、多様な価値観が混じりあうことで自由な発想が生まれ、クリエイティビティが上がり、面白いものがどんどん生まれるんです。バーチャルな世界でいろんなものを融合することができる今の世界では、国境の意味が希薄化し、違った考え方を受け入れて、新しい考え方を発想することができるが本当に大切だと思います。
003.
遊びこそ、最高の仕事
自由な生き方を体現している本田さんは、具体的にどのような生活を送っているんですか?
去年は、ハワイと日本とその他の国を旅した割合が、6:3:3。ハワイにいる時のスケジュールで言えば、朝起きて波がよければサーフィンに行ったり、アイアンマンのレースに向けたトレーニングをしたり。午後は、本の執筆などをし、夜は友人と晩ご飯を食べて早めに就寝。
何も特別なことはしていないんだけれど、「いつ仕事しているの?」とよく聞かれます。机に向かって作業をする教科書的な仕事は一つもないし、そもそも仕事をしているという感覚がないので答えに困っちゃいますね(笑)。人と会うこと、ご飯を食べること、トレーニングすることもどれも仕事と言えば仕事だし、遊びと言えば遊び。仕事と遊びの境界線はないし、いりません。例えば、先日出版した『なぜ、日本人シェフは世界で勝負できたのか』。僕自身、食べることが好きなので、世界中のレストランをまわる中で「海外のトップレストランで日本人シェフがとても活躍している!」と言うことに気がついたのが始まりです。実際に話を聞いてみると、かなり面白く、「これを日本のみんなに伝えて、何か新しくチャレンジする人の参考になったらいいな」と思い、本にしただけなんです。
ただ気をつけたいのが、こうやって自分の好きなことを仕事にする時、最初からマネタイズを考えてはいけないということ。僕の書いているハワイのガイドブックは、市販のものとは視点がまったく違います。普通のガイドブックならライターや編集者がその本を出すために話題になっているレストランを取材し紹介しているのに対して、僕は普段の生活で使っていて本当に好きなレストランを紹介しています。自腹で食事して感じる、よりリアルな情報書いています。想いや熱量は本当に大切だと思う。だから仕事を仕事としてやるより、遊びや人生としてやる方がいいものが生まれると思うんですよね。
004.
仕事は一つしかしてはいけない、と誰が決めた?
本田さんの働き方についての考え方を伺わせてください。
複数の仕事をすることが今の時代の働き方だと思います。僕は昔からそれをやってきました。上場させた会社の社長とは学生の時からの付き合いだったこともあり、アメリカ留学中にインターネットについての情報を提供しながらお金をもらっていて、帰国後も他の仕事もしながら関わり続けていたんです。一つの仕事に縛られずに続けてきたおかげで、スムーズに会社に参画し、上場させることもできました。
一つの会社に縛られると、もしもその会社が倒産した場合、職を失ってしまうリスクがある。これまではいわゆるレールがあったから、そこに乗っていればどうにかなったけれど、今はレールがないから立ち行かなくなってしまう。一方で、インターネットのおかげで個人に力がつき、今は誰にでも等しくチャンスがあります。起業だって、昔と違って今は比較的、ラクにできる。働き方も生き方も、自由な発想を持って一つのことに縛られない方がリスクヘッジになるし、なにより楽しいですよ。今は本当にいい時代だと思います!
005.
サーフィンも人生も、いい波は必ず来る
本田さんの著書『Less is More 自由に生きるために、幸せについて考えてみた。』にある、「流されてみるのも大切で、そこにいい波が来たら乗る」という考え方に似ていますね。
今、世の中に溢れているインターネット関連の仕事ができたのって、ここ10数年なわけですよ。これからも新しい仕事はどんどん生まれてくるはず。だから、ああだこうだと決めつけすぎず、仕事をする中で「あの分野は自分に向いているな」「あの仕事、面白いな」とシフトしていく方がいいと思います。ただ、いざ波が来た時に上手く乗っていけるようなスキルを身につけておくことが大前提。何も考えずにふらふら流されるのではダメ。これはサーフィンも同じで、波に乗る準備ができていないと波には乗れない。でも、いい波は必ず来る。それが変化の激しい時代を上手く生きる秘訣なんじゃないでしょうか。
006.
人生とは、旅である
旅するように生きる本田さんの考える旅について、伺わせてください。
旅に出る一番の理由は、好奇心です。大人になるとだんだんといろんなことがわかってきて好奇心が薄れていく。でも実はわかった気になっていることが多いんです。それに対して、子供は知らないことだらけで好奇心が旺盛だから、いくらでも成長する。例えば、熱いお湯に近づいちゃダメと子供に言っても、子供はどうしても手を入れてみたくなり、お湯に触って初めて熱くて危ないことを知りますよね。そういう子供の時に感じた知らないことを知りたいという好奇心を蘇らせて僕を成長させてくれるのが、旅です。
旅すると、自分の中のオプションを増やせるんです。何をするにしても、いろんな選択肢を見てから考えた方が絶対にいい。選択肢を知らない限り、発想にも及ばないじゃないですか。旅先では「こんな人生もアリなんだ!」「すげえヘンなヤツがいる!」などという発見の連続。知らない世界に触れると、否が応でも新しい価値観に出会うんですよ。
今振り返ってみると、僕の人生は旅そのもの。決まりきった道を行かないのも旅だし、途中で面白い道があったらそっちに切り替えるのも、旅。僕の人生は、言われた通りに従えばいいパックツアーの旅行ではありません。これからも自分の頭で考えて人生を旅し続けたいです。