「世界はいま、君たちを必要としている」AppleのCEOティム・クックが語る卒業スピーチ

Appleの現CEO、ティム・クック。2009年にスティーブ・ジョブズにより後継者として指名された彼が、仕事をする上で大切にしていることは、「自分だけの信念を持って取り組むこと」。

ここで紹介するのは、2015年に彼がジョージ・ワシントン大学の卒業式で行ったスピーチの書き起こしです。

内容を3つにまとめると、

1.自分だけの北極星を見つけよう。2.Appleのエンジニアのように「不可能はない」という気持ちを忘れずに。3.コートの外側から批判するよりも、コートの中で主役となって世界をリードしよう!

01.
自分だけの信念を持つ
それが人生の道しるべとなる

私はアメリカの南部生まれだったのですが、高校2年生の時に論文コンテストで賞をとり、ワシントンへ行くチャンスを得ました。そして、1週間の滞在中にジョージ・ウォレス元知事とカーター元大統領の2人に会うことができました。
ウォレス元知事は、黒人が学校へ通うことを許さなかった人種差別主義者で、対するカーター元大統領は「我々はすべてつながっている」という考えを持っていました。彼らもまたアメリカ南部の出身でしたが、世界をまったく違う視点で見ていたのです。

私が子どものころは、まだ黒人差別がありました。教科書でさえ事実を捻じ曲げて書かれていた中で、私は何が正しく、何が本当のことなのかを自分で確かめたいと考えていました。そして、両親や教会から学んだ道徳観と心の声に従って、自分だけの考えを持つに至りました。

さて卒業生の皆さん。今この瞬間、自分と向き合う旅が本格的に始まろうとしています。自分の生きる意味を探し、それを追いかけるということ。自分だけの北極星を見つけてください。
選択が簡単なものも難しいものもあるかもしれませんが、旅とは、どこにいくか「選ぶ」ということなのです。

02.
世界は君たちを必要としている
情熱は世界を変えられる

私のターニングポイントは、ある人物との出会いでした。彼の名はスティーブ・ジョブズ。1997年~1998年にかけて低迷していたAppleを、一緒に再生しないかと誘われたのです。
私もまた、そのときは落ち込んでいました。どこかで仕事は仕事と割り切っていたのです。世界を変えたいとは思っていましたが、それは職場ではなく、プライベートな時間にやるべきだと思も。
ジョブズは目の前で「目標は世界を変えること。誰もが使えるテクノロジーの力で、みんなが夢を叶えるためのツールをつくる」と語っていました。その姿を見て、私は情熱に溢れていた10代の頃の自分を思い出しました。
彼との出会いは私の人生を変え、それから17年経ちますが後悔したことは一度もありません。
仕事とは他の誰かの役に立つことでもあります。Appleの製品は世界中の人々に活力を与えています。信念を持ち、それを実行に移す企業は、本当に世界を変えることができるのです。そして、個人でもまた世界は変えられます。
君たちは、そういう人であるべきです。

03.
外野から批判をするのは簡単
コートの中に立ち、主役であれ

人を陥れるために、コートの外側から批判をする人はいつでもいるものです。意志があるのに努力をしない人はそういった人と同じくらい有害です。キング牧師は、バーミンガムの牢獄から「我々の社会は悔やむ必要がある。悪人の放つ憎むべき言葉にだけではなく、善人の沈黙にも」という手紙を書きました。

コートの外側でただ眺めているのは、君たちがすべきことではありません。世界はコートの中に立ち、プレイをする君たちを必要としています。世の中には解決しなくてはいけない問題がたくさんあります。虐げられている人々はまだまだ多くいます。治癒が必要な病気も山ほどあります。
世界は君たちの力と、熱意を必要としているのです。

リスクを恐れないで下さい。冷笑や批判は無視してください。歴史は一個人だけが変えられるものではありませんが、変えるきっかけはつくれます。そして、それをするのは君たちです。君たちでなければいけないのです。
あらためて、卒業おめでとうございます。

TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。