アナタのお話聞きます。LA発のムーブメント「FREE LISTENING」で思い出す、人とのつながり

ソーシャルメディア全盛のいま、対面型のコミュニケーションの回数や時間は、いったいどれだけ減ったことだろう。

誰かに話を聞いてもらうだけで、胸の内がすっと軽くなる。最近、そんな経験をした覚えは?知らない誰かに、ただ黙って耳を貸す。それを体現したプロジェクトが、いま世界にひろがりつつある。

街頭に立ち、誰かの話を聞く。

LAに暮らすベンジャミン・マティス。彼は「FREE LISTENING(話聞きます)」と走り書きしたサインボードを手に、じっと街頭に立つ──。

2012年、ベンジャミンは多忙な日々の中で行き場を失い、暗闇の淵にいた。行き詰った彼の心を解放したのは、街中で声をかけてきた一人のホームレスだ。

お金を要求された際、素直に応じたり、断るのではなく、代わりにホームレスの言葉に耳を傾け、話し合った。

すると、これまで抱いていた閉塞感が嘘のように消え去り、見ず知らずの相手とのつながりを感じた。一人ではないことを実感できたという。それがきっかけになった。

人に言えない悩みがある。

誰にだって、人に言えない悩みや不安がある。しかし、頭を抱えたまま日々を送るのではなく、誰かに聞いてもらうことが、自分を解放し、心を解きほぐすカギになるはず。そう思って以来、ベンジャミンはサインボートを手に街角に立ち、人々の声に耳を傾けてきた。

「ビックリするくらい、みんな人に言えないことを心に溜め込んでいたんだ。まさか、こんなに多くの人の想いを受け取ることになるとは思ってもみなかったよ」。

「ちょっと聞いてもらっていいかな?」。多くの人が心に抱えたモヤモヤをベンジャミンに打ち明ける。人々の会話にじっと耳を寄せているだけでも、聞いてもらう相手からすれば、心を寄せてもらっている気になるのかもしれない。

多くの人に求められていると思ったベンジャミンは、親しい友人に声をかけ、対面型のコミュニティー「Urban Confessional」を設立した。

適切なアドバイスは不要。ただじっと側で聞いて、受け入れるだけ。思いやりと寛大な心で、真摯に相手の話に耳を貸す。この根源的なコミュニケーションが、このSNS全盛の時代に生きる自分たちを“人間らしさを取り戻せる”ような気にさせるのかもしれない、とベンジャミンは言う。

今では世界13カ国に浸透し、
毎年開催されるイベントに。

2016年、Urban Confessionalはアメリカだけで20州にひろがった。さらには、カナダ、イギリス、スペイン、インド、オーストラリア、南アフリカ、そして日本と、世界13カ国にコミュニティーを拡大。2015年からは毎年「FREE LISTENING DAY」が開催されるほど認知されているようだ。

人と人とが話し、聞く。そうしてお互いが抱える問題に気づいては、愛情を知り、一人ではないことを実感する。

対話が世の中を、今を、もっとステキな場所に変えるはず。ベンジャミンはその信念を掲げながら、今日もボードを手に街頭に立っていることだろう。

Licensed material used with permission by Urban Confessional
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。