「支払いはお気持ちで」。お店ではなく、利用客が料理の値段を決める店。

Sit, Eat, Enjoy.When you are happy & full,pay as you feel in our Magic Money Box.(座って、食べて、楽しもう。ハッピーになって、お腹が膨れたら、その気持ちを魔法の箱に)。

オーストラリア・メルボルンにあるアボッツフォード修道院には、レストランカフェが併設されています。上の文言は、その店内にあったブラックボードに書かれていたメッセージ。そこでは、飲んだり食べたりしたものに対して、自分で値段を決めて支払うんです。

中は、ビュッフェになっていて、お皿に好きなだけ料理を盛って食べられます。食後には「コーヒーはいかが?」なんて、スタッフが気さくに話しかけてきたり。

生演奏もしばしば。

メルボルン近郊やシドニーなどに6店舗を構える「Lentil as Anything」。働いているのはボランティアの従業員たち。珍しさに驚いたと同時に、いくら払うべきかを考えさせられた場所でした。

そして、最近はこういったドネーションレストランと同じ仕組みを導入したお店が増えているそうなんです。

支払いの値段を
自分で決める店

ノース・ロンドンにあるフレンチレストラン「Just Around The Corner」のオーナー、ミカエル・ヴァソス氏は、値段のないレストランをすでに4店舗展開。テレグラフにこうコメントしています。

「良いサービスと良い料理で迎えれば、みんなたくさんチップを置いていってくれるものです。だから、食べた人にその価値をぜんぶ決めてもらうことにしました。これまで上手くいったのは、良い仕事をし続けてきたからこそ。そう確信しています」。

心ない支払いには、
どう対応するの?

ヴァソス氏はその他にも4店舗、値段が固定されたレストランを経営していますが、値段のないレストランのほうが、10%ほど高い利益を出していました。

なかには、あんまりな支払いをする人もいますが、こんな対応をしているのだとか。

「そういうときは、受け取らずにお金をお返ししています。そうすれば、次に来る時にはもっと必要だということに気づけるでしょう」。

彼によると、値段が固定されているレストランで250ポンド程度支払っている人々が、このお店では600ポンド支払うこともあるそう。釣り合いがとれているのかもしれません。

同じくロンドンにあるレストラン「MJU」のセールスディレクターは、昨年45ポンドの料理に対して支払われた金額が平均20ポンドでしたが、結果的には利益に繋がったとコメントしています。

クレームが出ない

利用する側にしてみると、料理を頼む際に見ているのは、値段と内容。そこからどんなモノが、いくらで味わえるのかを想像します。美味しければ感動するし、反対にガッカリすることもあるでしょう。サービスが良ければ、また訪れたいという気持ちにさせられるかもしれません。

しかし、このシステムは、食事の後に自分でその価値を判断する仕組み。考えてみれば、食べた料理、受けたサービス、そこで食事をした体験、どの価値も人それぞれバラバラ。期待の度合いもまったく同じというわけにはいきません。だからなのかはわかりませんが、この仕組ではクレームが発生しないんですって。

自分が体験した食事の価値は
いくらだろう?

自分の感動や、目の前にあるモノの価値を金額に換算する機会って、なかなかありません。投げ銭やチップ制度にも似ていて、応援するようにお金を支払う感覚と似ているでしょうか。

ときおり申し訳なくなるくらい安い値段で、素晴らしい料理やサービスを受けることがあります。そういう時に感じた感謝の気持ちがお金として伝わり、お店を支えているのでしょうね。

TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。