日本のコーヒーラバーが脱帽する「メルボルンのカフェ文化」

コーヒーラバーとして、ずっと気にはなっていたものの、なんとなく見て見ぬふりをして遠ざけていた場所。

それが、オーストラリアです。

というのも、実際地理的に私の住んでいたアメリカからは、ものすごく遠い。遠ざけていたというか、とにかく本当に遠いのです。

スタバが撤退するほど
独自のカフェ文化が根づく場所

オーストラリアのコーヒー文化について気になりはじめたのは「スターバックスがオーストラリアから撤退」というニュースを見てから。
※2014年に直営店の運営権を地元企業に売却。いまもスターバックスの店舗は同国内にて複数店舗が営業はしているが、直営ではない。

独自のカフェ文化が強く、スターバックスが流行らなかったのだそう。今や世界のどこにでもあるスターバックスが撤退するほどのカフェ文化を持つ国だなんて、正直気にならないわけがない!

でも、私はコーヒーセカンドウェーブ発祥の地シアトルに住んでいたから(やっぱり今も変わらずシアトルらしい深煎りコーヒーに1番ホッとしてしまう)、オーストラリア、とくにメルボルンのコーヒー文化の話を聞くたびに、実際行ったら負けを認めるしかないような気がしていたのです(勝ち負けなんかないのに……)。

たとえば、ずっとCDを買って音楽を聞いていたから、iTunesのほうが楽だって気づいていながらも、なかなかポリシーを崩せない、みたいな。

そうこうしているうちに、遠ざけていてもコーヒーの神様は向こうからやって来ました。
タイミングときっかけがものすごく重なり、つい先日メルボルンへ行くことに。

「リョウコさんには一度メルボルンに行って欲しいですね」と言い続けてくれていたONIBUSのオーナー坂尾さんに行っておくべきカフェを教えてもらって、シアトルっ子がいざ出陣です。

アメリカとオーストラリアでは
メニューの形態がまったく違う!

© 2018 Ryoko Iwata

この時期のオーストラリアは秋深まる頃。
灰色の空と紅葉の景色は、秋のシアトルにとっても似ていました。
わたしはこんな季節に飲む温かいコーヒーが1番好きです。なのでカフェ巡りが初日から楽しみで仕方ありませんでした。

まずは南半球でもっとも大きいといわれる屋外市場クィーン・ビクトリア・マーケットのすぐ近くにある「Market Lane Coffee」から。
もう、この店のキャッチコピーに私はいきなり心を射抜かれます。

Market Lane Coffee

© 2018 Ryoko Iwata

「We love to make coffee for the city that loves to drink it.」
(わたしたちはコーヒーが大好きな街のためにコーヒーをつくるのが大好きです)

こんなこと言ってくれるカフェ、最高じゃないですか。

コーヒー好きのためなら絶対おいしいコーヒー出すよ!という情熱を感じます。内装もとてもおしゃれ。

ちょっと座る場所があるくらいで、ここはどちらかというとポップアップのようなお店。こんな小さなスペースにこれだけのセンスを詰め込めるとは……。
1軒目から圧倒されました。

© 2018 Ryoko Iwata

注文しようとして気づいたことがあります。
それは、アメリカとオーストラリアではメニューの形態が全然違うこと。

アメリカでも日本でも、「ドリップコーヒー」「アメリカーノ」「エスプレッソ」「ラテ」「カプチーノ」など、コーヒーとエスプレッソドリンクの種類がずらりと並んでいますよね。
でもメルボルンでは「WHITE」「BLACK」「FILTER」しか書いていないところが多いのです。なんともいさぎよい。でもちょっと注文に戸惑ってしまいました(笑)

© 2018 Ryoko Iwata

こちらはPatricia Coffee Brewersの店内メニュー。WHITE、BLACK、FILTERと3つのメニューしかないところに注目

苦し紛れに「……WHITEください」と言うと、「どういう飲み方で出してほしい?」と聞かれました。

「WHITE」はミルク入りのコーヒーのことを指します。種類も豊富。でもメニュー表には書いていないのです。
ミルク+コーヒーのドリンクはたくさんありますが、メルボルンの人たちは書いていなくてもどんな種類があるのかを普通に知っているのだということを、この超シンプルなメニューが語っています。

たとえば、Flat White(フラットホワイト)はオーストラリアではポピュラーなドリンク。きめ細かい泡のミルクがエスプレッソに乗っています。
同じミルクを使ったラテやカプチーノとどう違うの?って思いますよね。
わかりやすい図をつくってみました。

© 2018 Ryoko Iwata

この3つのドリンクの1番の違いはミルクのふわふわ感

「BLACK」はブラックコーヒーのくくり。
Short Black(ショートブラック)はエスプレッソのショット。
Long Black(ロングブラック)はお湯にエスプレッソを入れたもの。
他にはブラックのアイスコーヒーなどもあります。

正直、どこもハズレがない!

さらにもう一つアメリカと違うなと感じたことは、アメリカのカフェはコーヒーを買って、自分で席に持っていくスタイルばかりですが、メルボルンは席に案内されることが多いことです。
コーヒー屋さんというより、「カフェ= 食+コーヒー」という概念が強いんでしょうね。

そして1番「こりゃ参りました!」と思ったのは、どこもハズレがないこと。
もちろん事前におすすめしてもらったカフェはどこも間違いはないのですが、ふらっと立ち寄ったメルボルン大学内の小さなコーヒースタンドでも、街なかにあるドーナツ屋さんでも、レベルの高いコーヒーが普通に出て来ます。本当にどこでもおいしいコーヒーが飲めるのです。

© 2018 Ryoko Iwata

メルボルン大学内のカフェ「HOUSE OF CARDS」

Market Lane Coffeeのキャッチコピーの「コーヒーが大好きな街」の意味が、メルボルン滞在中にどんどんわかってきました。

コーヒーを出す人も出される人も、本当にコーヒーを楽しんでいるんです。
わたしも一杯飲むたびに心が温かくなっていることに気づきました。

それって、コーヒーの質がただ高いからというだけではなく、お店全体に広がる「おもてなし」の気持ちと、コーヒーにたっぷり注がれている愛情のおかげなのだと思います。

オーストラリアのカフェ文化、本当に参りました!

次のコラムでは、みなさんにオススメしたいメルボルンの素敵なカフェについて書きたいと思います。

Top photo: © Ryoko Iwata
Licensed material used with permission by Ryoko Iwata
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。