街の人みんなが「最高だよ」というニューヨークに住んでみたくなった

ニューヨークを好きになったきっかけは『Sex and the City』だった。キラキラした大都会で、主人公のキャリーが気取らないリアルな毎日を送っているところに心惹かれた。恋だけでなく、仕事にも奮闘し、友情やリアルな悩みを抱えながらたくましく生きる。そんなキャリーの人間味あふれるところや、好きなことを仕事にし、ライターとして生きる彼女の姿は、まさに憧れだった。いつかわたしもこんな風に暮らしてみたい、と。

新しい価値観を知るのが
たまらなく楽しかった

その頃わたしは、大学で英語を学びながら就職活動をしていた。キャリーの影響から「好きなことを仕事にしたい」と思い、ファッションの仕事に就いた。将来バイヤーとして海外を飛び回りたいと思ったからだ。

ただ、わたしはキャリーに憧れてはいたけれど、それは彼女の生き方であって、ニューヨークという街に対してではないと思っていた。このときはまだ、自分の本当の欲求に気づかないふりをしていたのだと思う。

その後ファッションの仕事を離れ、別の会社でライターとして働いた。27歳で仕事を辞め、世界を放浪する旅に出た。旅のいいところは自分を知ることができるところだ。

わたしは旅を通じて日本と違う価値観やライフスタイルを知れることが、楽しくてたまらなかった。新たな価値観を取り入れて、自分がどんどん広がっていくのを感じられるからだ。そして「知らないことを知りたい」という好奇心が、わたしのすべてを動かす原動なのだと知った。

出会う人すべてが
NYの街を愛していた

そんなわたしにとってニューヨークは最高の場所だった。なぜならここには世界中のありとあらゆる人種の人々が暮らしている。こんなにも多種多様な人々がこの狭い中に密集している場所は、世界広しといえどもここだけだろう。世界一周をしなくても世界一周できる場所、それがニューヨークなのだ。

そして圧倒的な出会いの数。歩いているだけで、電車に乗っているだけで、カフェでお茶するだけで毎日出会いがある。「今日はプロスペクトパークへ行こう」と思っても、なぜかチャイナタウンで食べ歩きをすることになったり、電車で知り合った人となぜか次の日に人生初の「スイングダンス」を踊ることになったり。出会いのおかげで予想もつかない展開になるのが楽しくて仕方がなかった。

そしてニューヨークで出会うすべての人たちが、この街を愛していた。「ニューヨークは最高だよ!」「ここに住みなよ!」とみなが口をそろえて言う。そんなにも愛される街に住んでみたい。そう思い始めたのだった。

28年の人生で
「今」が一番わたしらしい

「住んでみたい」と思うようになってやっと、「じつはニューヨークに住むことがわたしの学生時代からの夢だったんだ」と気づいた。

本当はずっと住みたかったのだ。資金面や手続きの面倒さを理由に、「どうせ無理だろう」と思い込み、夢を夢じゃないことにしていた。けれどこの街にはわたしの欲しいものがすべてあって、何もかもが新鮮で、ハプニングさえも楽しくて、28年の人生の中で「今がいちばんわたしらしい!」と心から思えた。

それははっきりと、「キャリーみたいに、恋、友情、仕事、ぜんぶ楽しんで、リアルな生活をこの街でしたい」と自分の夢を自覚した瞬間だった。そこから迷わずマンスリーのアパートを契約し、突然のニューヨーク生活がスタートした。

クイーンズの
シェアハウスへ

ニューヨークでは、「クイーンズ」というマンハッタンから電車で30分ほどの場所に暮らしていた。クイーンズはマンハッタンやブルックリンほど有名ではないが、その分観光客も少なく、生活感のあるエリアだ。アジア人が多く住んでいるのもわたしたち日本人が暮らしやすい理由のひとつだろう。治安が良く、物価がマンハッタンより安いのも特長。わたしはそんなクイーンズの、日本人女性専用のシェアハウスで3人のルームメイトと共に住んでいた。 

昼はマンハッタンへ出かけて街を散策し、夜はルームメイト達とお酒を飲んだりテレビを見たり。たわいもない日常だけど、それが日本ではなくニューヨークでできるということに、わたしは幸せを感じていた。また、海外での生活は楽しいことも多い半面、言葉の壁や文化の違いから、寂しさや疎外感を感じる場面も少なくない。そんなとき、家に帰ると日本語で話せる同じ文化を持った人たちがいるというのは、心にとても大きな安心感をもたらしてくれた。

Licensed material used with permission by Takagi Yukari
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。