ニューヨークの「いま」を撮り続けるフォトグラファーの生々しい言葉
大都市、ニューヨーク。もちろん誰もが知る街だし、周りを見渡せば詳しい友人のひとりやふたり、いるかもしれません。でも、実際に訪れたことはありますか?
一体どんな景色が広がる、どんな街なのか。「この目でひと目見てみたい」と憧れを抱いている人も多いかもしれません。
Vincent Pfliegerは、そんなニューヨークの「いま」を取り続ける写真家のひとり。カメラを手にしたときからずっと、街の写真を撮り続けているという筋金入りのストリートカメラマン。彼が写すのは、人々のリアル暮らしの重み。
「だいぶ、安全な街になったよ」
「80年代から90年代、ニューヨークはいわゆる犯罪都市だった。映画や音楽に登場するような、きっとあのイメージのままじゃないかなと思うよ。僕がこの街に住み始めたのはそのあとだから当時のことはあまり知らないけど、今ではそんな面影はほとんどない。市長がジュリアーニ氏になってから、NYは以前より安全な街になった。もちろん、危険や犯罪がまったくないとは言わないけど、少なくとも表に出てくることは少なくなったんじゃないかな」
「とんだ皮肉だね」
「この街には、あらゆるところから来た人が一緒に暮らしている。僕にもフランス人や、イタリア人、ハンガリー人、クロアチア人、ポーランド人、その他いろいろな国から来た友人がいる。
世界中を探しても、これほど多文化が共生できている場所はないだろうね。それなのにトランプ大統領がこのNY出身だというのは、ちょっとした皮肉だよね」
街で出くわす、生のNY
「街で写真を撮っていると、いろいろなことに出くわすんだ。数週間前は、この冬初めての吹雪に見舞われたんだけど、ホームレスの人たちの写真を撮ったよ。暖かいコーヒーを一緒に飲んで、話をした。そういうとき、写真を撮ることはそれほど重要じゃないんだよね」
「そこで、あるひとりの女性を見かけたんだ。彼女は妊娠4ヶ月で、凍えないようにたくさんの毛布に包まっていた。周りには人通りもほとんどなかったし、絶望的な状況に思えたよ。彼女は僕と少し話したあと、あと10ドルあればブルックリンのホテルに泊まれる、と言ったんだ。僕は所持金はちょうど10ドル。彼女にあげたよ」
「吹雪のなか去っていく彼女の後ろ姿を見ながら、僕は祈ったんだ。
“きっともう二度と会うことはないだろう。でも、彼女とお腹のなかの子どもだけは、無事でいてほしい”
って」