ノーベル賞作家が、恋に悩む息子に送った「恋愛アドバイス」
あなたは、自分の息子に好きな相手ができたことを打ち明けられたとき、どう答え、何をアドバイスしますか?
ここで紹介するのは、ショーン・アッシャーさん編集の『注目すべき125通の手紙 その時代に生きた人々の記憶』に掲載された、ノーベル文学賞作家が自分の息子に送った素晴らしい手紙。ぜひ参考にしてみては?
もしも、
息子が恋に悩んでいたら…
1958年11月10日
親愛なるトム
手紙は今朝届いた。父さんなりの考えを書こう。もちろんエレインも彼女なりの考えを書くはずだ。
まず、もし恋をしているのなら、それはすばらしいことだ。誰にとっても、身に降りかかる最高の出来事だと言える。人からばかにされたり、軽んじられたりしないように。
次に、愛には種類がいくつかある。自分のことしか考えず、卑劣で、貪欲で、傲慢な人はうぬぼれるために愛を利用する。こういう愛は醜くいびつだ。いっぽう、自分のなかにある良いものすべて、優しさや思いやり、尊重する気持ちなどをほかの人に注ぐ愛もある。尊重にはマナーを守るという意味だけではなく、他の人をたったひとりのかけがえのない人として認めるという、より次元の高い意味もあるんだ。前者の愛は不快な感情をもよおし、自分がなさけなく、弱い人間だと思えてくるが、後者の愛は今まで自分にあると気づかなかった力、勇気、高潔さ、そして知恵までもが湧いてくる、そんな力を秘めている。
この愛はままごと遊びとは違う、とお前は言う。そこまで深く感じているのなら、もちろん、ままごと遊びではないのだろう。
だが、おまえは自分の感情について父さんに訊いているわけではないと思う。おまえ自身が誰よりもよくわかっているはずだからな。そういう感情とどう向き合えば良いかを知りたいというのなら──それなら父さんも力になれる。
まずはそういう感情を抱いたことを誇りに思い、喜び、感謝することだ。
愛の対象は最高で最も美しい。それに応えるよう努力したまえ。
もし誰かを愛しているのなら、そう告白しても害はないだろう。ただ、なかにはとても恥ずかしがりの人もいる。だから告白するときはその点を考えないといけない場合もあることを覚えておくように。
女の子はお前の感情を察したり感じ取ったりできるものだが、言葉に出して言ってほしいとたいていは思うものだ。
自分の気持ちがなんらかの理由で一方通行で終わることもあるが、だからといってその気持ちが価値の低いもの、良くないものというわけではない。
最後に書いておく。おまえの感情は私にはわかる。私にもその感情があるからだ。おまえにもそういう感情があると知ってうれしいよ。
父さんたちは喜んでスーザンと会おう。大歓迎だ。だが、お膳立てをするのはエレインだよ。こういうことは彼女の領域だからね。きっと大喜びで準備してくれるだろう。彼女も愛について知っている。たぶん父さんより力になってくれるんじゃないかな。
それから、失恋を恐れてはいけないよ。別れるのが正解だという場合はそうなるのだから──肝心なのは先を急がないことだ。良いものはけっして逃げていかない。
愛をこめて
父より
恋多き父の
重みのあるアドバイス
この手紙は「怒りの葡萄」や「エデンの東」など、映画化された大ヒット作を世に出し、ノーベル文学賞も受賞した小説家、ジョン・スタインベックが、寄宿学校に通う14歳の息子から送られた手紙に対して書いた返事です。
初めて恋をした息子に対して、父親の目線からエールと助言を送っています。文中に登場するエレインはスタインベックの3人目の妻にあたります。