ノーベル賞の大村智教授は、特許権の一部を放棄し、10億人を救っていた

ノーベル医学・生理学賞を受賞した、大村智・北里大特別栄誉教授の「人間力」が話題になっている。受賞理由となった「イベルメクチン」の開発はもちろんだが、彼の魅力はそれだけでは語れないようだ。

特許権の一部を放棄
薬剤を無償提供し
10億人を救った!

1987年10月のニューヨークタイムズ紙には、メルク社がイベルメクチンを元にした治療薬「メクチザン」の無償提供を開始したニュースが掲載されている。

当初、年に1度の投与で済む劇的な効果を持つ動物薬として大きな注目を浴びたイベルメクチンだが、人間にも応用できることがわかり治療薬「メクチザン」が開発された。その後、世界保健機構(WHO)を通じてアフリカや中南米、東南アジアなどに無償・低価格で提供され、沖縄を含む熱帯地域に住む人々述べ10億人以上を風土病などから救った。が、なぜ無償提供が実現したかというと大村氏だ。

2012年6月に発行された日本私立大学協会発行の教育学術新聞によれば、同氏はメルク社との契約の際に特許ロイヤリティを受け取る契約を交わしている。が、発明通信社は「大村博士らが治療薬の商用利用で得られる特許ロイヤリティの取得を放棄し、無償配布に賛同したために実現した」と書いている。

つまり、彼は10億人の人々を救うために特許権の一部を放棄したのだ。

とはいえ、受け取った特許料は
250億円以上

もちろん、それ以外については特許ロイヤリティが北里研究所に支払われる契約のため、1990年頃から数えても250億円以上の収入があったという。それまでは経営に苦しんだ時期もあったが、特許による収入を元に研究所の経営も立て直し、研究助成や研究所運営、病院建設に役立てられたそうだ。

さらに、2007年には故郷である山梨県韮崎市に私費で韮崎大村美術館を建設。自身が所有していた1500点以上の美術品を寄贈した。建設費だけでも2億円、展示品は総額5億円以上にも及んだと朝日新聞が伝えている。その他にも、朝日新聞の医療サイトapitalでは、近くに温泉施設やそば屋を寄付したことが報じられていた。

朝日新聞には大村氏のコメントがある。

「この美術館は、若い人たちへの投資でもある。大勢の人が訪れる施設にしたい」

「私は微生物の力を借りただけ」

多くのメディアによって大村氏の人間性を表わす「名言や格言」が紹介されている。なかでも、NHKで紹介されている以下のコメントにはその謙虚な姿勢が表れている。

「私の仕事は、微生物の力を借りているだけで、私自身が難しい事をしたわけでも偉いわけでもありません。私は、微生物がやってくれた事を整理しただけです」

ニューヨークタイムズ紙でも「私は微生物の力を借りただけ」と言葉を変えて紹介されており、国内でももちろん話題だ。

行動が表わす彼の「人間力」も相当なものだが、数々の発言から見える誠実な人間性も多くの支持を得る理由の一つ。ノーベル平和賞を受賞してもいいのでは?なんて声が上がるのも、なんら不思議なことではない。

TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。