ノーベル物理学賞受賞者が教える「物事を正確に理解する」基本ステップ
12月10日に行われたノーベル賞授賞式の場に姿はなかったものの、晩餐会に向けた受賞スピーチ(代読による)で、世界の人々を魅了したボブ・ディラン。2016年ノーベル賞注目の的は、最後までこの人物でした。
さて、ここではディランのスピーチではなく、半世紀前に物理学賞を受賞した、アメリカ出身の物理学者リチャード・P・ファインマンの唱えた学習方法に注目したいと思います。
物事をより深く、迅速に理解するうえで欠かせないメソッド、のちに“ファインマン・テクニック”と呼ばれるその方法をライターShane Parrish氏が分かりやすく記事にして解説しています。
本当の意味で
“自分を理解する”ということ
私(Parrish氏)は、ずっと何かを学ぶのが苦手でした。学習とは、費やす時間の大小だと考えていたからかもしれません。ですが、自分の人生を変えるものと出会ったのです。それがファインマン・テクニックでした。
1965年にノーベル物理学賞を受賞したリチャード・P・ファインマンは、「何かを知ること」と「何かの名前を知ること」の違いを理解しており、その点こそ彼が成功した重要な理由の1つだと私は考えています。
ファインマンは「何か」を誰よりも、明確に理解するための学習方法を発見しました。それがファインマン・テクニックと呼ばれるもの。あらゆる物事をより深く、迅速に学習していくときに役立つものです。
あなたが学びたいトピック、テーマ、コンセプトは、じつは重要ではありません。どれか1つを選んでみてください。このテクニックはすべてのものに有効で、何よりもこれは非常に簡単に習得することができるのです。
では、そのメソッドについて詳しく解説していきましょう。
ステップ:01
子どもでも理解できる言葉で
自分の中にあるイメージを
書き出してみる
まず真っ白な紙を用意して、あなたが学びたいテーマを冒頭に書き込みます。次に、小さな子どもに教えるようなやり方で、あなたが知っていることを、書き出してみましょう。知識豊富な大人の友人を相手にしているのではなく、基本的な概念や関係を理解するだけの語彙力と注意力を備えたばかりの、8歳くらいの子どもに教えるイメージです。
何かを正確に理解していない場合、多くの人が複雑な表現や言い回し、専門用語を使うもの。ここで厄介なのは、私たちが思い違いをしているということです。それは、その対象について正確に理解していない自分でさえ、気づいていないのです。さらには、専門用語を使うことで、周囲の人たちもあなたの誤った理解に気づくことができません。
だから、子どもでも理解できるワード(日常の会話レベル)で、アイデアをすべて書き出すとき、あなたにはコンセプトを深く理解して、発想のあいだにある関係と結びつきを簡素に表現することが必要となるのです。
もしも、それに困難さを感じるようであればOK。それは、あなたが自分の知識の欠落部分をきちんと認識している証拠。この緊張感が大切なのです。なぜなら、ここに学習のチャンスが潜んでいるから。
ステップ:02
自分の言葉で説明できるまで
復習あるのみ
1つ目のステップで、あなたは必然的に自分の知識に欠けている部分を見つけることができたはずです。このとき、あなたは重要な何かを忘れているか、もしくはそれを上手に説明できないでいるか、大切なコンセプトを結びつけるのに困難を感じるはず。
学習において、これは貴重な反応です。それは自分の知識の限界をあなた自身が気づいた証拠だから。能力とは、自分の力の限界を知ることであり、今まさにそれを特定したのですから。
これこそ学習がスタートする瞬間です。
あいまいさに気づいたならば、教科書や資料を読み返して、自分の言葉で説明できるまで学習あるのみ。自分の理解の限界を知ることは、あなたが陥りやすい誤解(誤認識)の量を減らすことでもあります。実生活に知識を活用する際の成功率もぐんと高めてくれますよ。
ステップ:03
自分の考えを
シンプルに編成する
ここまでであなたは自作の一連のノートを手にしたようなもの。次はそれらを見返して、教科書や資料から専門用語を引用していないか確認しましょう。そして、それらを1つのまとまり感のあるシンプルな物語に編成していきます。
その後、それを大きな声で読み上げていきます。説明が回りくどいとか、難しく思えたならば、その部分の理解がまだ足りていないことを示しています。
ステップ:04
理解したことを
他人と共有する
最後に、理解を確実なものにしたいならば、作成した物語を誰かに読み聞かせてみることです。
そのテーマに疎い人物が理想的ですが、8歳くらいの子どもに聞かせてもいいかもしれません。あなたの知識をはかるための最終テストは、自分の考えを他人にきちんと伝えられるかどうかです。
自分の考えをうまく表現できないという人は、マインドセットの際、このアプローチを参考にしてみてはいかがでしょう。“知性とは成長のプロセス”というファインマンの信念が、何かの役に立つかもしれません。