38歳で仕事を辞め、世界を旅したときに気づいたこと
Solen Yucelさんは、誰しもが羨む環境にありながら、すべてを手放して旅に出た。そこには、社会が期待する自分ではなく、自身が望む「本当の自分」を見つけたいという強い欲求があった。
「過去15年間よりも、この1年のほうが生きていることを実感する」。充実した旅の最中で、彼女が気づいたこととは?
「自由」と引き換えに、
すべてを手放した。
私は以前、広告業界という世界でもっとも光り輝く世界で働いていました。当時の家は、素敵な家具ばかりを備えた3LDKのマンション。たくさんの本やコーヒーメーカー、座り心地の良い高級ソファーなど、あらゆるものに囲まれて生活していました。
そんな生活も、1年前に終わりました。どれもこれも、自分の自由と引き換えに喜んで手放しました。これ以上ない幸せな決断だったと言えるでしょう。
20代の頃、私は仕事で成功し、人生の伴侶を見つけ、高水準の生活を送ることだけが幸せだと思っていました。世界中のあらゆる若者と同じようにプログラミングされていたのでしょう。だからこそ、一生懸命努力したのです。
30代前半、私が手にしていたのは最高のキャリア、たくさんの素敵なモノ、海外旅行、それから離婚…。
30代後半になり、私はマネージャ―へと昇格。手元にあったのは、より多くの素敵なモノ。そして、長い間付き合った彼との別れによる心の痛みでした。
この時、道は2つにわかれていました。いまあるものを手放さず、ブリジット・ジョーンズのように、いつか落ち着けることを願って新たな出会いを探し、ハッピーエンドがもうすぐやってくると祈り続け、ローンを組んであまり好きではない仕事をし続ける。あるいは、そうでない方法を取るか。
私が選んだのは、多くの人が避ける道。仕事を辞め、持っているものすべてを手放し、旅に出ることにしたのです。
「本当の自分」を見つける旅へ
人生を変えてしまうような決断をする前に、私はとても大切な質問を自分自身に問いかけていました。それは、「私はどうしたら幸せになるんだろう?」ということ。
家族でも、友達でも、同僚でもなく、私だけの幸せを得るにはどうしたらいいのか。そこで気付いたのが、他人の旅のブログを読むたびに、私の心が疼いたということ。私はその記事を書くような人間になりたかったのです。本当の自分を見つけるための旅に出るべき時が、ついにやってきました。
「この1年間で経験したことは
過去15年間のそれに勝る」
2015年10月23日、興奮と緊張の入り混じるなか、ニューデリー行きの飛行機に乗りました。
それから9か国を訪れ、素晴らしい人々に出会い、忘れられない経験をしました。ただしそれは、決して楽な道ではありませんでした。盗難に会い、病気にかかり、孤独に感じたこともありました。新しい国に行く度に、その国の通貨や挨拶を覚え直さなければいけませんでした。
しかし、この1年間で経験したことは、過去15年間のそれに勝るものでした。ダイビングの資格を取り、山を登り、電車やバスの中で夜を過ごし、たくさんの新しい料理を覚え、テントや相部屋で寝たり、ヨガの合宿に参加したり…たくさんの素敵なコトを体験しました。
そして、
ある錯覚に気がつく。
そしてついに、私や周りの女性の何がいけなかったのかが分かりました。私たち女性は運命の相手を見つけないと幸せにはなれないと教えられていたのです。パートナーを必要とするということは、自分自身が完全ではないということ。誰かを見つけない限り、必ず何か足りないものがあるということなのです。この考え方こそが、人気小説やテレビ番組、映画や歌、周りの人間が生み出した錯覚なのです。
幸せのために、
心に描く理想の自分に近づく
私はそれに気付いたのです。本当の幸せというのは自己実現から来るのであって、心に描く理想の自分に近づくことが大切なのです。
有名デザイナーの服を追いかける広告業界のマネージャーというのは、理想の私ではありませんでした。もちろん、高級マンションに住むことも違いました。すさまじく強い女性、才能のあるライター、他の人に影響を及ぼすことができるような人間というのが理想の私。
そんなことに旅の途中で気づいたのですが、同時に映画『食べて、祈って、恋をして』のようなストーリーを期待されていることにも気づきました。一緒に旅していた男性との写真をFacebookに投稿したとき、こんなメッセージをたくさんもらったのです。
「旅行中に運命の人に出会うと思ってた!」「このイケメン誰?ついに見つけたの?」「超カッコイイ。彼氏?」
何度、「落ち着いて。ただの友達よ」というメッセージを返信したことでしょう。
多くの友達に、私の旅がラブストーリーで満たされると思わせてしまいました。完全に間違ってるとは言えないのだけど。
これは、
自分自身に恋をする旅
たしかにこれは間違いなくラブストーリーです。が、その相手は自分自身。この旅は、1人の女性が世界へと飛び出し、自分の強さと弱さを発見して、どんな時でも自身を愛するということを学ぶラブストーリーなのです。
40歳を過ぎると遅すぎる。そんな風に私たちの脳に植え付けられた恐怖なんて、まったく関係ありません。何が遅すぎるというのでしょうか?
私の旅はまだ終わっていません。次の章である、南米に到着しました。どんなに刺激的な体験が私を待っているのか…まったく想像もつきません!