歯学博士が教える。「なぜか虫歯になりにくい人」の特徴って?
「歯磨き粉、ブラシ、磨き方を変えるだけでは、歯の健康を保つことができません」。そう語るのは、歯学博士である滝澤聡明さん。
彼の著書『顎がゆるめば、不調は改善される 「噛み合わせ」から始める歯のケア習慣』では、歯に関する雑学や、メンテナンス方法などがまとめられていました。
とくに気になったポイントをピックアップしてみました。
噛み合わせが悪くなると
体のバランスは崩れるけど…
近年「歯の噛み合わせが良いと脳が活性化される」と様々な先生が提唱しています。咀嚼が脳にどれほど影響されるのかは諸説ありますが、皆さんに訴えたいのは「噛み合わせさえ良くなれば、身体の不調はなくなる」と過信しないでほしい、ということです。
現在、様々なメディアで「噛み合わせを調整したら脳の働きが良くなった。見た目も若返った」と言われることがありますが、あまりそういった情報にとらわれないでください。というのも、こうした改善例は、医学的に正しいデータが出ていないものがほとんどで、歯科学会でもオススメはしていません。
もちろん、噛み合わせが悪くなると身体全体のバランスが崩れるので、改善すれば良い影響は出ます。私も患者さんに積極的に勧めていますし、実際に身体の不調が治る方もたくさん見てきました。
かといって、噛み合わせを矯正するだけで、すべての疾患が治るわけではありません。噛み合わせとバランスのとれた生活(睡眠をとる、栄養のあるものを食べるなど)を合わせて、初めて健康的な身体は作られるのです。
だから「治したのに、肩こりが治らないぞ!」と歯医者さんにクレームをつけるのは、お門違いなのです。
虫歯になりにくい人の
特徴とは
「小さい頃から一度も歯医者に行ったことがない」
羨ましい話ですが、こういう人は、生まれつき歯や唾液の質が良い人かもしれません。
普段、口の中は中性ですが、飲食などによって歯が溶けやすい「酸性」になりやすくなります。よって、口内を酸性から中性にするまでの時間が短い人は、歯や唾液の質が良いと言えます。これは普段の食生活やセルフケアというより、顔や性格のように遺伝によるものが大きいかもしれません。
私も、これまでに3万6千人の患者さんを見てきましたが、検査して数値を見てみないことには、その質の程度は分かりません。
気になる人は、治療や定期検診を受ける前に、医師に「唾液の検査をしてほしい」と申し出てください。ごく簡単な検査で、唾液が、酸性寄りか中性寄りか、量が多いのか少ないのかチェックできます。その結果を見れば、自分の状態をより深く理解でき、どのようにメンテナンスすれば良いのかの指針にもなります。
口臭の原因は
舌苔(ぜったい)にあり?
タバコは吸わないし歯周病や歯肉炎にもなっていないのに、口臭が気になる…という人は「舌苔(ぜったい)」が溜まっているかもしれません。
鏡で舌を見ると、表面が真っ白になっていませんか? 舌の表面はザラザラと細かいヒダ状になっていて、細菌や食べカスが蓄積していきます。じつは口臭の原因の8割は、この舌苔によるものだと考えられているのです。
舌の表面に溜まる舌苔は、体調不良、睡眠不足によるストレスや、抗生物質などの薬剤が原因となります。ちなみに抗生物質は、ある特定の菌に対して効果的に働くのが特徴。しかし、様々な菌が付着している口内に抗生物質を投与して特定の菌を退治すると、他の菌が繁殖してしまいます。それにより舌苔が増加し、口臭に繋がってしまうのです。
最近は、舌苔を取り除くための舌ブラシも販売されているので、気になる人は使用してみると良いかもしれません。しかし、舌苔を減らすには、根本であるストレスを解消し、きちんと睡眠をとるのが一番の解決策です。舌ブラシは、うまく併用しながら利用してください。