「噛み合わせ」に悩むあなたに、歯学博士がアドバイス。
歯学博士であり、東京にある「タキザワ歯科クリニック」の院長・滝澤聡明さんの著書『顎がゆるめば、不調は改善される 「噛み合わせ」から始める歯のケア習慣』。
滝澤氏によると「多くの人が正しい噛み方が出来ておらず、歯としての機能がきちんと使われていない」のだとか。
噛み合わせとは、一体どんなものなのでしょうか?
噛み合わせの「筋力アップ」と
舌出しの「リラックス」
重いものを持つときなど、グッと噛みしめることがあるでしょう。もともと、咬合力(噛む力)と筋肉の関係の深さは、歯医者やスポーツの世界で周知の事実として知られていました。
とくに握力はその繋がりが顕著で、ものを噛ませた状態で測定すると、数値がアップするというデータが出ているほど。逆に、噛み合わせが悪ければ、握力が低下する傾向があります。すべての筋肉は連動しているので、咬合力があれば、握力をはじめとする全身の筋力アップに繋がります。だからアスリートは噛み合わせにこだわるのです。
とはいえ、強く噛みすぎるのも良くありません。陸上選手のカール・ルイス、サッカー選手のディエゴ・マラドーナ、バスケット選手のマイケル・ジョーダンなど、ここぞという時は「舌出し」をしてプレーをしていました。
優れたアスリートである彼らは自然にやっていたのかもしれませんが、あれはまさに、噛み締めすぎないよう適度に力を抜いている証拠。筋肉がこわばって力が出なくなるのを防いでいたのです。
力を入れるところは入れて、抜くところは抜く。一流のアスリートは、日々の鍛錬でその大切さを知っているのでしょう。
身体の歪みは徐々にくるから
気づきにくい…
虫歯、歯周病、知覚過敏対策などはよく耳にしますが、噛み合わせの啓蒙(けいもう)はまだ十分とは言えません。噛み合わせが悪くて歯が欠けてしまうと、顎が低いほうにスライドして、顔全体が歪んでしまいます。正面から見て顔が大きく歪んでいたり、どちらかの口角が下がっている人は、どちらかの歯が1本欠けているなど、片方の歯の位置が低いことが多いのです。
また、噛み合わせが悪いと身体全体のバランスも歪みます。まっすぐ立っているつもりでも、左右どちらかに傾いているなら、肩が下がっている方の歯で噛むクセが強いのでしょう。肩こりや腰痛を引き起こす原因になるとも言われていますが、身体のバランスが崩れることによって相乗的に症状が表れていると言えます。
しかも、こうした症状は突発的に出るものではありません。じわじわと身体に表れるため、患者さんも気づきにくいのです。体調不良の原因が噛み合わせであると分かったときには、手の施しようがない状態になっていることがほとんど。気になる人は早めに歯医者さんへ相談を。
歯は想像以上に
“動いて”しまう
歯医者で噛み合わせを改善する場合、どんな治療をするのかを紹介しましょう。
まず、歯がすり減って低くなっている部分に、固いマウスピースで高さをアップするか、仮のかぶせもので高さを盛り、応急処置的に調整します。それから、差し歯と矯正のどちらで治すか、それとも2つをミックスして治療するか、を検討します。
ちなみに差し歯や矯正をしたからといって、何もしなくても良いというわけではありません。大人になってからも、下記のようなクセを続けていると歯は動くのです。
・歯を舌で押す
・指をしゃぶる
・爪を噛む
・頬杖をつく
・唇を内側に噛む
何年も無意識に積み重ねてきた悪癖が、矯正した噛み合わせを悪くします。これでは意味がないので、思い当たる人は上に書いたような行動に気をつけましょう。