タブーに切り込む「独裁者」という名のレストラン。

遡ることおよそ7年前、2010年12月17日、ひとりの青年の焼身自殺をきっかけにチュニジアの「ジャスミン革命」が始まったと言われています。23年間にわたって続いた独裁的なベン・アリー政権に終止符を打ち、民主主義をようやく手に入れた国民の雄叫び、ニュースを通して目にした日を鮮明に覚えています。

政権崩壊後、チュニジアは民主主義体制を整えるべく尽力していますが、かつての独裁政権を口にすることはタブーといった風潮があるようです。

そこに切り込んだのは、一軒のレストラン。その名も「Le Dictateur(独裁者)」。

物々しい雰囲気と
独裁者たちの肖像

重厚な赤れんが造りの店内に飾られているのは、ヒトラーやスターリンなど、世界各国の独裁者たち。2010年から2011年に起きたジャスミン革命から6年が経った今、民主化に向かうチュニジアで、あえて独裁政権の記憶を呼び覚ますような店は、写真からも異様な雰囲気が伝わってきます。 

独裁政権を風刺する雰囲気は、店内の装飾だけではありません。

メニューをみれば一目瞭然。「焼かれた自由」という名前のステーキや、「アナーキー」、「クーデター」といった独裁と革命を象徴するような単語がズラリ。

革命以前から、チュニジアでは独裁政権に対する発言はタブーとされていたようです。表現の自由がなく、内務省の承認がなければ出版物の流通ができず、政府によってインターネットの統制や報道管制も行われるんだとか。そのため、長い間反政府的な発言は不可能だったと考えられます。

革命後も、独裁政権について口にすることはタブーといった風潮は残り続けていましたが、「Le Dictateur」のオーナーSeif Ben Hammoudaさんは、

表現の自由は革命がもたらした最大のメリット

として、このレストランの営業を始めたそうです。

Le Dictateurは、首都郊外の高級地区Cite Ennasrにあり、このあたりはレストランの激戦区。Hammoudaさんは、普通に料理を出すだけでは注目を集めることはできないと考え、誰も思いつかなかった「独裁者」というコンセプトを掲げたんだそう。

物々しい雰囲気の店内の中、アーティストが自由に歌い、誰もが笑顔で食事をとっている様子は、私たちの知るそれとなんら変わりありません。

過去に蓋をせず、手に入れた自由を最大限に表現するLe Dictateurは、民主主義と自由のために前進する、チュニジアのひとつの象徴とも言えるのかもしれません。

Licensed material used with permission by Le Dictateur
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