みんな意外って言うけど、カセットテープは“音”が良い!
カセット初体験の若い子を
ニヤニヤしながら見てます
——いきなり聞いてしまいますが……カセット、売れてますか?
赤石:なんだかんだ、売れてきてますよ。買ってくれるのは若い子が多いかな。でも日本だとまだこれからっていう感じじゃないですかね?売っているお店が増えたから、やっと認識されてきたところじゃないかな。去年は、フィッシュマンズもライブ会場限定でカセットをリリースしていましたよね。
——若い世代には、カセットテープやプレイヤーは“懐かしいもの”ではなくて、まったくあたらしいカルチャーとして映っているっていうのもありますよね。
赤石:たまに「WARP」(併設されているライブハウス)にライブを観にきた高校生の子とかも寄ってくれるんですけど、カセットプレイヤーを見ても何なのかわからないみたいで。「これ何なんだろう?....でもなんか、見た目はかっこよくない?」っていうのをコソコソ話してたりして。僕はそれをニヤニヤしながら見ています(笑)。
おなじみのジャケットも、カセットテープ規格になるとすごく新鮮。
とにかく音がいい。
これホント!
赤石:アメリカやヨーロッパではレコードブームに次いでカセットも主流のひとつになってきているみたいです。現行のバンドが音源を自主リリースする時もほとんどカセットです。“メディアとしてカセットテープが好き” なひとが多いんだとか。もうCDやCD-Rはほとんど売れないらしいです。
海外のレーベルは2011、2012年あたりから新作をがんがんテープで出していて。向こうではかなり浸透してきていますよね。このお店に置いているテープもほとんど海外のもの。中古もあれば、現行もあります。
――なるほど。結局、カセットテープって何がいいんでしょう?
赤石:僕がびっくりしたのは、めちゃくちゃ音がよくて!結構、じゃないですね、衝撃的なくらい。こればっかりは聴いてみないとわからないと思うので、お客さんにもまず直接聴いてもらっています。
CDとかスマホで聴き慣れている曲を聴いてみると、よくわかると思いますよ。ビートルズでいいですか?(といってプレイヤーに『Help!』をセットしてくれる)
——想像よりずっときれいな音ですね!音はあきらめているというか、音質の悪さも味…と受け入れられているものだと思っていました。
赤石:感動しますよね!? まさかここまで、とは思わないですよね。みなさん、やっぱり意外って言います。ちゃんといい音なんですよ。とにかく、まずは聴いてみてほしいですね。
洗練されたソニー
無骨なパナソニック
――カセットだけじゃなく、プレイヤーもいろいろと取り扱っているんですね。
赤石:はい。ほとんど海外から仕入れてますね。この迷彩の「ショックウェーブ(パナソニック)」は、今でこそオークションとかでめちゃくちゃ高くなっちゃっているんですけど、中学生のときにこれ使っていたから懐かしいですよ。デカくてゴツいですよね。一応、防水・防塵仕様になってるんですけど、実際のところはナゾです(笑)。
発売当時は「サーフィンしながらでも聴ける!」
左の2つが『パナソニック ショックウェーブ』、右の2つが『ソニー スポーツ』。
堂本光一くんも使ってた!?
赤石:この2つのメーカーのプレイヤーが、もうすげぇ流行ってたんです。みんな大体「ショックウェーブ」か「ソニスポ」って感じだったと思います。
——パナソニック派? ソニー派? みたいな。
赤石:そうそう、メーカーで使っているひとたちが分かれるんです(笑)。「ソニスポ」はB-BOYっていうか、ヒップホップ。それこそBUDDHA BRANDとかキングギドラ(現KGDR)とか、さんぴんCAMPが開催された頃(1996年)というか。その世代のリスナーの間ですごく流行っていたみたいで。俺(32歳)よりちょっとうえの世代のひとたちですね。で、その下の自分みたいな世代は「ショックウェーブ」を使っている人が多いという印象です。
——カルチャーが反映されているんですね。
赤石:あ、昔やっていた『ぼくらの勇気 未満都市』(日本テレビ系)っていうKinKi Kidsが主演のドラマ知っています?
——最近、20年ぶりにスペシャルドラマがやってましたよね。
赤石:俺、リアルタイムで観てたから、懐かしくて当時のをもう1回観返したんですよ。そしたら、ドラマのなかで(堂本)光一くんが黄色の「ショックウェーブ」使ってて!「やべぇ、『ショックウェーブ』じゃん!」ってめちゃくちゃテンションあがりました(笑)。第1話で、一瞬しか出てこないんですけど。
しかも「専用ヘッドホンまで使ってるわ!」みたいな(笑)。専用ヘッドホンがあって、それで聴くと低音のところはブルブル振動するんですよ。あの機能の必要性はよくわからないんすけど(笑)。
あなたはソニー派?
それともパナ?
——メーカーによって音の違いって、あります?
赤石:『ソニースポーツ』は、すごく音が繊細な印象です。パナソニックのほうが比較的どこか粗めというか。ベースのブースト(※特定の帯域の音量をあげること)具合とかも、「とにかく上げとけ!」みたいな。“超力技”っていう感じで(笑)。
——(笑)それだけ聴くと、ソニーがいいように思えますが…?
赤石:でもこれ、結構ひとによって好みがあって。ソニーで聴いて、「やっぱり音がクリアで繊細だからこっちだな」っていう人もいれば、パナソニックで聴いて「粗いほうが味わい深いな」っていうひともいて。音像のダイナミックさにおいては「ショックウェーブ」かな、と。そこは完全に好みだと思います。ヒップホップとか、音の隙間が多かったりビート感の強い音楽は、カセットプレイヤーで聴くと特にハマる気がします。
お店で聴き比べもできるので、ソニーとパナソニック、どっちも聴いてみてほしいですね。