思い出の音源がアートに変身。「カセットテープ」で表現するアーティストたちのポートレイト
1970年代後半から80年代にかけて、音源・映像録音に使われていたのが磁気テープ。あの独特の音質を今でも求めるユーザーは意外に多く、近年微増ながら売り上げが伸びでいるんだそう。ですが、ここで紹介する使い方はまったくの別物。まさか、あのカセットテープでアート作品を創り上げようとは。
音は聞こえない。でも、
ミュージシャンを再現!
たとえばこのジミヘン。一本の長〜いテープをすべて引っ張り出して、そのテープだけで見事に特徴的なアフロヘアを表現している。すべてカセットテープだけで制作したポートレイトだとは思えないこのクオリティ、お見事。
シカゴ在住の女性アーティストErika Iris Simmonsさんが得意とするのは、このカセットやビデオテープ、フィルムを切り貼りして製作していくミュージシャンや俳優たちのポートレイトだ。テープを引っ張り出しては糊付けしモノトーンの世界で表現していく。少しずつ少しずつ、テープの長さを計算しながらの製作は1点につき、少なくとも3〜4週間はかかるという。
誰も見向きもしない素材で人を驚かすアート作品を創出することが彼女のモットー。おそらく、これまでに誰も挑んでこなかった廃材テープを使ったアート作品を見ていこう。
髪の質感まで忠実に再現したミュージシャンたち
ロングヘアのツヤ感がよく出ているジョン・レノン。
ドレッドヘアの特徴もテープだけで再現。
若き日のボブ・ディラン。
おでこに垂れた前髪が印象的なマイケル・ジャクソン。
カルチャー・クラブ時代のボーイ・ジョージ。
ブロンドのロングヘアが印書的なカート・コバーン。
パンク・ロックバンドThe Crushのセカンドアルバム『London Calling』。ステージ上でベースギターを叩き壊すポール・シムノンをジャケットに使用したこのシーンは有名。
スクリーンの演者たちも
テープ(フィルム)の中から
陰影で巧みに表現したアルフレッド・ヒッチコック。フィルムの送り穴が表情に印象を与えている。
ビデオテープを使って『パルプ・フィクション』のコンビを再現。
フレンチツイストのオードリー・ヘップバーン。
こちらはポルノスター、トレイシー・ローズ。
ボンテージ・モデルの草分け的存在のベティ・ペイジ。
アナログレコードをバルーンに見立てたツィッギー。
2013年グラミー賞シンボルロゴをデザイン
彼女を一躍有名にしたのが第55回グラミー賞(2013年)だった。ハーフインチの録音テープを用いて制作したグラミー賞のメインシンボルの蓄音機が、なんと公式アートワークとして採用されてしまったのだ。
「アナログテープでシンボルを制作するというErikaのコンセプトは、大変ユニークなだけでなく、グラミーと音楽界の歴史を象徴する卓越したアートワークだと思いました」
グラミー賞を主宰するThe Recording Academyの最高責任者Neil Portnow氏は、公式サイトを通じてこう賞賛。今では、Erika氏のテープアート作品は広告にも使われている。以下はアイウエアRay-BanのCMより。