「ピエロ」は陽気ではなく、恐怖の対象。「ピエロ恐怖症」
もうすぐハロウィン。今年はどんな衣装にするか、みなさんもう決めたかと思います。もしもピエロを選んだ人、周りの人たちを陽気にさせると思って仮想すると、意外にも逆効果を与えてしまうかもしれませんよ。
ジョニー・デップも公言する
「ピエロ恐怖症」とは
俳優ジョニー・デップの過去のインタビューに“ピエロ”に関するこんな証言が。
「顔に描かれた笑顔に対して、なんて反応して良いか分からないんだ。だって、優しいのか、噛み付いてくるのか、分からないから。その表面の下のどこかに“悪の側面”があるような気がしてならない」
これ、結構大マジなようで、ピエロへの恐怖症を乗り越えるため、今でもピエロのポスターや絵を部屋に貼っているという話も。
日本にも幽霊や化け物を恐怖対象として捉えることはありますが、海外においては「ピエロ(クラウン)」が恐怖対象となるようです。その証拠に「ピエロ恐怖症(Clown-phobia, Coulrophobia)」なんて名称まであるくらい。これが多くの人を悩ませているんだとか。くだんのジョニー・デップも、ピエロ恐怖症を持つひとりというわけ。
「なぜにピエロがこんなにも怖いのか」と、様々な研究はされているけれど、世間を納得させるだけの結論には至っていません。多くは推察のまま。
例えば、イギリスのシェフィールド大学の看護学部が行ったアンケート調査。4歳から16歳の入院している250人の子供たち全員が「ホスピタル・クラウン(入院している子供たちを励ますピエロ)が怖い」と答えました。
また、リバプール大学の心理学のPeter Kinderman教授も、ピエロ恐怖症の人たちのワークショップを行った結果、表情の読み取れない化粧やマスク、予想外な行動をするというピエロ特有のキャラ設定に恐怖を抱くという答えを導き出しています。あのハンバーガーチェーン店のキャラクターでさえ「怖い」と思う人もいる現実。
本来は、陽気で子供たちを楽しませ、周りを明るくするようなピエロ(道化師)が、恐怖対象となるとは…。
スティーヴン・キング作
『イット』の影響力
巨匠スティーヴン・キング原作で、1986年に出版されたホラー小説の名作の一つとして人気の『IT(イット)』。大ヒットとなった背景には、テレビシリーズ版として実写化された悪役の“ペニーワイズ”の猟奇的な個性。
小説発表からおよそ30年、この秋『IT(イット)』のリメイク作品が話題となっています。9月にアメリカで後悔されて以来、「前作よりはるかに怖い!」と人々を震え上がらせているようで。ちなみに、日本でも『イット / “それ”が見えたら、終わり』として11月に公開されます。
もちろんリメイクも原作に忠実に再現をしたとのこと。どうやらペニーワイズのモデルは、悪名高き“殺人ピエロ”として少年を含む33名を殺害し、1970年代のアメリカ社会を震撼させたジョン・ゲイシーのよう。映画の中のピエロの予測できない表情と行動に、実際に起きた殺人事件と重なり、よりピエロに対しての恐怖を、強めているようなのです。
ピエロに関する
社会問題
良くも悪くも、話題騒然の『IT(イット)』のリメイク映画公開にあたり、ピエロに対するイメージを改めて悪くし、子どもたちの誕生日会にも声がかからなくなってしまったとして、「世界クラウン協会」がキングに対し怒りの矛先を向けました。
それに対し、キングのTwitterでの返信がウィットに富んでいて。
「ピエロたちが俺に怒っているようだ。すまない、君たちほとんどは良い奴らなんだろうけど…でも、子どもたちは元々ピエロを怖がっていた。そんなに責めないで欲しい」
この映画に限らず、『バットマン』シリーズに登場する悪役のジョーカーや、スピルバーグ監督作品の『ポルターガイスト』に出てくるピエロの人形も、その影響の一つといえばひとつ。
でも、主に子どもたちをターゲットにする殺人鬼をベースにしたリメイク版も、1990年に放送された実写化テレビシリーズで名優ティム・カリーが怪演したペニーワイズも、当時の子どもたちに少なからずトラウマを植え付けたことはたしか。
“恐怖の対象”としてピエロを悪用し、度を越したイタズラ(クラウン・サイティング)も欧米では問題視されています。
2017年に蘇ったペニーワイズ、あなたの心にどんな恐怖を宿すか、映画も楽しみです。