31歳ではじめてお見合いした話。vol.4【最終回】

「恋愛の勉強になりました!」
「おもしろい人生で憧れます!」

細々と続けてまいりました『31歳ではじめてお見合いした話。』、ありがたいことに様々な感想をいただきました。でも、ちょっと待って!この記事からなにかを学びとろうとなんてしてはいけません。

「ひらすら笑いました!」

これが正解。そう、この記事をどこまで読んでも、あるのはネタだけです。

ということで、『31歳ではじめてお見合いした話。』痛い、痛い、痛すぎるvol.4【最終回】です!

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31歳の大記録

人生ではじめてのお見合い。その待ち合わせ場所である新宿駅にいらっしゃったお相手の胸元には…

ポ、ポ、ポ、ポ、ポ、ポシェット~!

もうね、かつて一斉を風靡した芸人・鼠先輩ばりに、頭の中で“ポ”って言いました。この“ポ”の記録は今も破られていません。おそらく、今後も破られることはないでしょう。それぐらい、“ポ”って言いました、私。

だってショルダーバッグでもなく、セカンドバッグでもなく、それはポシェット以外の何物でもなかったんですもの。しかも斜め掛けだもんね。斜めにかかってる紐の細さも絶妙なポシェット感。そして「それ、モノ入ってんの?」っていうサイズもジャストポシェット感だもんね。 

それに加えてFさん、身長が低めな方でね。多分、150cm台かと。一方の私、ただでさえ163cmあるのに、今日に限って10cmヒールのサンダル履いちゃってて。相手の身長なんて、微塵も考えてなかったね。完全に、私、見下ろしちゃってるよね。 

そんなことが一瞬にして頭の中を駆け巡り、本当に申し訳ないながら「か、帰りたい…」と思いました。でも、自分を奮い立たせる。「人を外見で判断しちゃいけない!」と。ご飯は行こう、ご飯は。だって、新宿で『おとなの週末』からセレクトしたお店だってすっごい気になるし。

私「はじめまして。CHIEです」 
Fさん「Fです。じゃあ、行きましょうか」 

挨拶もそこそこに移動。そこからは、新宿にはわりとよく来る私でも全く知らないルートを通って、階段を上ったり、下りたり、どっかの物産展とかも突っ切って移動。それはそれはスムーズなナビゲーションです。

こんなに歩くならどこかの出口で待ち合わせしたほうがよかったんじゃないかって思ったけど。まぁ、どっか隠れ家的なお店にでも出るんだろう…と思ったその刹那。 

Fさん「エレベーター昇ります」 

えっと。ここはもしや、ミロードでは?ミロードじゃん!駅ビルじゃん!

軽くパニくる私を乗せて、エレベーターはレストラン階に到着。Fさんはこれまたスムーズなナビゲーションで、目的地に向かいます。 

Fさん「ここでいいですか?」 

「目的地周辺に到着しました。音声ガイダンスを終了します」

カーナビが必ずするアナウンス。あれってたまに、“え?本当に目的地周辺?何もなくない?”って思うことありません?私はこの時、その感覚を覚えました。だって目の前にあったのは…。 

スープを売りにする、若者向けのカジュアルなレストラン。

えっと。ここのコーンスープおいしいよね。うん、おいしいよ。大学生の時、よく行ってた。でもさ、『おとなの週末』には絶対載ってないよ!しかも日曜日のお昼時のミロードのカジュアルレストラン。お客さん待ってるよ!並んでるよ!女子大生やら若いカップルがいっぱい並んでるよ! 

もう、おわかりでしょう。このあたりで、私はすでに完落ちしています。謝って済むのなら、私の罪を認めて、今すぐこの場から立ち去りたい。

身長173cm(ヒール込み)で31歳のわりには派手めな女と、身長155cm(推定)でポシェットをかけた男性。この2人が無言で並ぶこと十数分。やっと入店したものの、隣との席間隔は20cmあるかないか。「絶対、出会い系だと思われてるよなー。しかも、完全に騙してるの私のほうで」と不安を抱えながら、これ以上ないザワザワ感に包まれて、お見合いがスタートしました。

31歳独身女の市場価値、判明

カコーンなんてししおどしの音ではなく、「いらっしゃいませ〜!」という店員さんの明るい、明るすぎる挨拶で始まった、はじめてのお見合い。

ここからは、ふたりの会話(と私の心の声)をダイジェストでお届けします。

Fさん「何にしますか?僕はランチセットで」 
私「あ、じゃあ、私もランチセットで(ひとり1000円ですね。リーズナブル♪)」 
Fさん「なんか今回は僕もよくわからずに来てますが、大丈夫ですかね?」 
私「いえいえ、大叔母がすみません。無理なお願いをして(私が下手に出るしかないのか)」 
Fさん「ところで、CHIEさんは大叔母さんとどういう関係なんですか?」 
私「えっと…大叔母は文字通り大叔母で…父方の祖母の妹です(大叔母は大叔母だっつーの)」 
Fさん「……」 
私「Fさんは大叔母とカンボジアで会われたんですよね?旅行がお好きなんですか?(どうだ!必死のフォロー!)」 
Fさん「ええ。でも最近はほとんど旅行も行きません。電車にもめったに乗りません。今日は久しぶりに電車に乗ったので、切符の買い方がわかりませんでした」
私「(ここ何年も切符の買い方って変わってないですよ、ね?)あはは、そうなんですか。私も旅行好きで、カンボジアにはひとりで行ったんですよ」 
Fさん「へー。じゃあ、あれだ。本とかは読まないんでしょ」 
私「(なんで決め付け!?)……。いや、あの、私、仕事が書籍の編集なんで、もともと本は好きですし、読みますよ」 
Fさん「へー。じゃあ、あれだ。スポーツはしないんだ」 
私「(断定!?)……。いえ、冬はずっとスノーボードしてます」 
Fさん「へー。僕はスポーツは何もしません」 
私「じゃ、じゃあ、ご趣味は?(ここで初めてお見合いらしい質問!どうだ!)」
Fさん「ないです」
私「……」 

この後、サッカー、海外旅行、本、大学で学んだこと、仕事の話などなど、思いつく限りの、私が31年間生きてきて話題にできることを全て放出しました。もう出血大サービス。これ以上、流す血もありません。

でも…最後に返ってきた言葉。 

Fさん「なんか、CHIEさんってわけわかんないですね。とらえどころがない」

終了〜!!! 

 

レストラン滞在時間1時間。共通点がなにもなく、会話にもならず、なんの話題を振っても断定的な返事しか返ってこないことに嫌気がさし、“この後どうします?”というアピールを全身で振り切って、帰ってきたのでした。 これだけ会話が成立しなかったのに、この後に一体どこに行こうとしているのか興味はあったのだけど。

そして、駅で別れた後(ちなみに、この時初めて「私、JRなんで」と言った)、すぐに大叔母に電話。 

私「本当に申し訳ないけど、何も共通点がない。話せることがないので、無理です」 
大叔母「あらー。そこはあなたのジャーナリスト魂で、人ゲノムのお話とか聞きだしてほしかったのに。Fさん、女性に慣れてないのよ。そこはあなたのジャーナリスト魂でなんとか……」 
私「ホントにごめん。無理!」 
大叔母「あなたね、そんなに贅沢言ってられないのよ。Fさんは研究者で安定してるし、有名な大学だし…(以下省略)」 

私、ジャーナリスト魂なんて持ってませんって。そもそも、ジャーナリストじゃないし。ただの編集者だし。でももし、あえて、あえてですよ!この一連の経験を通して、私が導き出した結論があるとしたら。


31歳独身女。商品状態は良好。少なくとも動作不良はありません。しかし、市場では過剰供給が進んでおり、年々その価値が下がってきています。また、需要はありますが、需要側の質、ニーズも限定されつつあり、需要と供給がマッチするのは稀少となってきています。今回の件につきましては、当該商品は“わけがわからない”という市場価値が認定されました。 


これもジャーナリズム?(全世界のジャーナリストの皆様、ごめんなさい)

 

こうして、私はお見合いヴァージンを喪失しました。すっごいイタかった。ってか、あれから数年を経た今でも思い出すとまだイタイ。

“何度もスルとだんだん気持ちよくなるよ”っていうけど、あれ、ホントなの(笑)?

おわり

TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。