「人はひとりでは生きていけない」を、本当の意味で理解した7年間。

3月11日

世界を震撼させた大地震がおきたあの日、私は留学先のオーストラリアで大学の友人から、「日本が大変なことになっているけど大丈夫?」と声をかけられました。

あれは、ちょうど午後の授業を終えた直後。いつもはニコニコした友人の不安げな表情に、母国で何かとてつもないことが起きてしまったのだと、恐ろしくなったのを覚えています。

当時、私がいたオーストラリアでは、町を飲み込む津波や高台に向かって走る人たちの映像が、何度も繰り返しテレビにながれていました。あの日、日本にいなかった人たちさえも、あの光景を見て、恐怖や不安、そして衝撃を感じたのです。

悲しみを乗り越えるための
「5つのステージ」

あれから7年──

あの日の出来事を直に体験し、大切な誰かを失ってしまった人たちは、今日にいたるまでどのように生きて、今どうしているのかという思いが頭に浮かびます。

というのも、私も約7年前に、震災が原因ではないけれど大切な人を失ったから。

その大切な人とは、お母さんでした。彼女は、私にとっていちばんの理解者でありサポーターであり親友でもありました。なので、当時はあまりにも多くのことを一度に失った気分になり、「混乱」と「悲しみ」で自分を見失いそうになっていました。

そんな時、知人が教えてくれたある情報が、行き場のない気持ちと向き合うキッカケをくれたのです。

それが、「The Five Satges of Grief」と呼ばれる仮説。

日本ではあまり知られていませんが、人はDeinial(拒否)、Anger(怒り)、Bargaining(交渉)、Depression(絶望)、Acceptance(受容)という5つのプロセスを経て、深い悲しみを乗り越えていくという考えです。

「大切な人との別れ」が
教えてくれたこと

この仮説はホントなの?という議論も世にありますが、自身で経験してみて感じたのは「あながちウソでもない」ということでした。

当時、母の死後、私は心のなかで現実を猛烈に否定していました。その後は、先に述べた順番どおりではありませんが、「どうして私が?」などという思いから、怒りがわいてきたり落ち込んだり…。

それでも、日々歩むなかでヒシヒシと感じたのは、人はひとりでは生きていけないということ。

ときどき私を外へ連れ出してくれた友人、喧嘩してやつ当たりしても側にいてくれた家族。

そんな日々を過ごしていくうちに、途方にくれていた気持ちがだんだんと吸い上げられていくような気分になり、荒れた心が穏やかになっていくのがわかりました。

「ひとりでは生きていけない」なんてあたり前のことだと頭ではわかっていたけれど、あの時の経験があったからこそ、本当の意味で理解することができた気がします。

私は、今でも周りの人たちの手をかりながら生きています。うまく伝えられている自信はないけれど、心の底から彼らに感謝しながら。

ひとえに「悲しみ」と言っても、人それぞれその度合も感じ方も違うでしょう。それでも批判を恐れずに言うと、あなたの悲しみが例え底なしでも、前を向いていればそれが一生つづくことはないと思うのです。

大切な人との別れが突然だった人ほど、現実と向き合い、悲しみを乗り越えるのに時間がかかったかもしれません。

あれから7年──

あの日、大切な人を失ってしまった「あなた」は、今日までどのように生きて、今どうしていますか?

TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。