「人はひとりで生きることも死ぬこともできない」。そんなことを教えてくれたタクシー運転手の話

突然ですが、みなさんは親孝行をしているでしょうか?経営コンサルタントの小宮一慶さん曰く「タクシー運転手さんには、親孝行な方が多い」ということで、彼らと話をするたびに、自分はもっと親孝行ができたのではないかと思うそうです。

ここに小宮さんが実際に出会ったタクシー運転手さん、そして自身のお母さんが亡くなったときのエピソードを紹介したいと思います。

すべては有難いことの連続である

小宮さんがお母さんを亡くしたのは、2013年。普段は東京に住みつつ、全国の会社や講演会で日本中を飛び回っている小宮さんは、大阪で療養生活を送るお母さんの死に目には会えないだろうと、ほとんど諦めていたといいます。

しかし偶然が重なり、お母さんの体調が急変したとき、小宮さんは大阪出張中。しかも滞在していたホテルは病院のすぐ近くだったそうです。急変の知らせを弟さんから知らせてもらった小宮さんは早朝、タクシーを呼んでもらい病院へ駆けつけます。

歩いて行けない距離でもない行き先を告げると、運転手さんははじめ怪訝な表情を見せますが、小宮さんの顔を見て状況を察し、急いでくれたそうです。その甲斐もあって、まさに奇跡的にお母さんの死に目に会うことができたのです。

小宮さんは当時、テレビ番組に出演するために大阪にいたのですが、多くの方に迷惑が掛かるからと出演をキャンセルすることはなく、通夜や葬儀の手配を弟さんにお願いし、喪主としての務めを無事に果たします。

その後も名古屋の講演会などをキャンセルすることなく開催できました。死に目に会うことができたのは偶然の賜物ですが、その後の通夜葬儀や仕事を無事に果たせたのは、弟さんや親族、病院や葬儀会社の人たちの協力があってこそ。彼らに感謝せずにはいられないということです。

その後、東京で乗ったタクシー運転手さんの話に小宮さんは考えさせられます。なんでも「両親が高齢となり、長年経営していた焼肉店を自分たちで営業できなくなったのを機に店を継いだが、うまくゆかずに数年で断念。現在タクシー運転手をしている」とのこと。

運転手さんは「両親が大事にしてきたお店をそのままやめてしまうのは忍びなかった」と言います。また、別の日に乗ったタクシーの運転手さんは、東京から実家の山口まで年に3~4回、高齢の母親を心配して飛行機で帰省するそうで、しかもそのうちの1~2回は家族を連れて帰るそうです。旅費だけでも大変なのに、じつに親孝行な方だといえるでしょう。

小宮さんは決して自分を親不孝だとは思っていませんが、こうした運転手さんに会うと、「もっと親孝行ができたのではないか」と思うそうです。そして自身のお母さんの死に際にしても、本当に多くの人たちに助けられていると実感し、「人間はひとりで生きていくことはもちろん、死ぬときでもひとりで死ぬことはできない」ということを知ったそうです。

だからこそ、生きているうちは多くの人たちのために働かないといけない、と小宮さんは結論づけます。自分を育ててくれた親のためにも、毎日を支えてくれるパートナーや、社会人として育ててくれた上司や先輩、お客さまのためにも、毎日、自分ができる精一杯のことをやらなくてはならないのではないでしょうか。

TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。