「魔除けのブレスレット」が、アフガニスタンの子どもたちを救う。
人々の命を守るワクチン。しかし、すべての国でその重要性が認識されているわけではない。
アフガニスタンもそのひとつ。乳児死亡率が世界でも特に高いこの国では、その大切さを理解していない親も多いと聞く。
さらに厄介なことに、この国にはワクチンに対する伝統的な偏見も根付いているらしい。
知識不足と偏見が相まって、WHOによると、この国の6人に1人の子どもがワクチン接種を受けていないようだ。
伝統的な「おまじない」が
子どもたちの命を救う
どうすれば、乳児のワクチン接種率を上げられるのか?その解決策として考案されたのが、乳児用のブレスレット「Immunity Charm」だ。
医師がワクチン接種毎に色のついたビーズを足していくことで、その子どものワクチン接種歴がわかるようになっている。
なぜブレスレットなのか?と不思議に思う人もいるだろう。
実は、Immunity Charmのモデルは、アフガニスタンで親から子に贈られるという伝統的な魔除けのブレスレット。
考案者たちは、長く信じられてきたおまじないを活かして、親たちにワクチン接種に対する新しいインセンティブを与えようと考えたわけだ。
人を動かすための「デザイン」
地域文化と医療を組み合わせた例はほかにもある。
例えば、カンボジアで貧血改善のために考案された「Lucky Iron Fish」。
調理時に鍋に入れることで鉄分を補えるというこの鉄製の魚は、カンボジアで幸運のシンボルとして親しまれている魚、カントロップがモチーフ。ただの鉄球を鍋に入れようとはなかなか思わないが、幸運のシンボルなら使ってみたくなる。
また、バングラデシュで女性の一酸化中毒予防としてつくられた「Coel」は、南アジアの既婚女性たちがよく身に着けるバングルに着想を得たもの。
「~しましょう」という呼びかけだけでは、人はなかなか動けない。そんなときに必要なのは、自発的に動きたくさせるデザインの一工夫なのかもしれない。