「仕事に誇りを持つため」に必要なことを、本当は知っている
天職は一夜にしてわかるものではなく、見つけたいと意識して、問いかけをしていくことで、わかっていくものです。
天職研究の権威であるコロラド州立大学Bryan J. Dik教授等が提案する、天職を見つけるためのカウンセリング(a calling-oriented counselling)他から、見つけるためのステップをご紹介します。
ステップ1.
「何のために生きていきたいか」を考える
まずは仕事に限らず、広い意味で自分にとって人生とは何を意味するのか、人生の目的は何かを明確にしましょう。
例えばBryan J. Dik教授等は、このような問いかけに答えることでそれがわかると提案しています。答えは心の中だけではなくて、紙に書いた方が効果的なのだそう。
・人生で最も重要なことは何だと思いますか?
・人生の目的をどこで見つけますか?
これまでの人生で最もうれしかったこと、逆に最も辛かったこと、自分が意欲的に取り組み、大変な思いをした経験が何だったか答えることで、目的が少しずつ見えてくると思います。
人生の目的を端的に表す、ミッションステートメントをつくることも有効です。ジョージア大学のSusanna Wu-Pongプログラミングディレクターは、以前、別の大学で大学院生・博士課程・社会人向けの天職を見つけるためのプログラムを実施し、その中で、人生の目的を見つける作業としてミッションステートメントを参加者に作ってもらいました*2。
そのプログラムで提案されたミッションステートメントの条件です。誰の役に立ちたいのか、どんなふうに役立ちたいのかを1行以下で、この要素を入れて作ります。
・仕事にもプライベートにも当てはまるもの
・覚えられるもの
・心に響くもの
・行動できるもの
著者のSussanaさんのミッションステートメントは「人々が自分って最高と思えるような自分になれるようにサポートする」です。
ステップ2.
それが当てはまる仕事は何かを探る
ステップ1で、人生の目的、自分にとって人生が何を意味するかがわかってきたら、その目的にフィットする仕事とのマッチングを行います。
具体的には、人生と仕事に対する自分の価値観を明確にして、優先順位を付け、それが実現できる仕事と尊重される仕事環境(社風、人、住む場所など)を選ぶよう提案しています。
例えば、人生において最も大切にしている価値観が「腹を割って話すこと」であれば、通訳やコーディネーター、仲介的な仕事があっている可能性が高いですし、自由に意見が言える職場であることはマストでしょう。
ステップ3.
「自分は何に意義を感じるか」を知る
別の研究者は、天職を知るには「自分にとって何が意義深いと感じるか」を知ることだと指摘しています。
そこでオススメなのが、日記を付けることです。その日の夜や翌朝、3分で良いので、その日(前日)の中で、最も意義があると感じた行為2.3個を箇条書きで記録して下さい。
自分が提案した案が採用された、後輩に活躍の機会を作ってあげられたといった仕事に直接に関わることだけでなく、同僚の悩みをじっくり聞けた、友達の結婚式のスピーチを心を込めて書いたなど、プライベートな行為も書き出して下さい。
書き続けることで、自分にとって何が価値がある行為、経験、時間の過ごし方なのかがわかってきます。
最後に……
これから就職する人であれば、人生の目的に最も合致した仕事を見つけることが自己カウンセリングのゴールになります。一方で、既に仕事をしていて、今の仕事に満足してない、でも、転職するのが難しいという人は、人生の目的により近い担当や部署に変えてもらったり、それも難しい場合は、今の仕事のやり方やとらえ方を変えて、より仕事に意義を感じられるように工夫することをDik教授等は提案しています。
自分にとって、心から意義を感じられる仕事に就くと、パフォーマンス、幸福度が向上する可能性が高いです。
毎日できる時に、コツコツ自己分析をして、理解を深めていくことで、あなたにとっての天職が何かが見えてくるでしょう。
出典:Bryan J. Dik and Ryan D. Duffy; Calling and Vocation at Work: Definitions and Prospects for Research and Practice; The Counseling Psychologist 2009; 37;424 originally published online Apr 14,2008;
*2 David Bryce Yaden著の本” Being called” (2015)- Chapter 7 Calling Counselors; A Novel Calling Intervention for Career Development and Well-Being- Susanna Wu-Pong