お金のために働く人が、「起業家」に向いていないワケ
「仕事で成功したい」
よく耳にするこの言葉。仕事で成功する秘訣が書かれた本やWEBサイトは世の中にごまんとある。けれど、そもそも成功したい人たちは、どのくらい先のことまで考えているんだろう。もしかしたら、自分の一生だけじゃなく、次の世代やそのまた次の世代へと引き継がれていくような長く愛し愛される働き方をすることが一番の成功なんじゃないか。
そう思ったのは、「The School of Life」の動画の影響。起業家たちの話なのだけど、最後まで見ると、明日から仕事に対する思いが少し変わりそうな気がする。
多くの人々が自分のビジネスをスタートさせたいと思っていますし、新規事業に関するニュースは山ほどあります。
でも、「起業」にまつわるニュースは、ある一つのことに偏っていると思えるのです。そのニュースのだいたいが、新しいタイプのビジネスを始めたばかりの人々のこと。彼らは革新的技術のチカラを使い、独創的な製品やサービスを生み出す、商業界の限界を超えたパイオニアなのです。
たとえば、新たな起業家たちは、クローゼットの湿度を測定・管理するアプリを開発したのかもしれないし、家畜やペットの空腹度を知るために小さなセンサーを考案したかもしれません。もしくは、イタリア旅行を予定する人々を繋ぐソーシャル・プラットフォームを立ち上げたのかもしれません。
目新しいものばかりが注目される。このような風潮によって、「革新的技術を利用したイノベーションこそが、起業家になるための正しい方法だ」と、思ってしまう人が多いような気がします。
そして、起業家として成功する未来を考えるとき、どんな斬新なアイデアが功を成すのかと、頭の中をごちゃ混ぜにしながら自問自答してしまうかもしれません。
混乱状態のなかで、私達が到達する答えは奇抜なものや、陳腐なもの。世間の常識を無視したものに偏り始める可能性だってあるのです。
まだまだ、
可能性を秘めたビジネス
でも、別の道もあります。経済の大半は、長い時間をかけるものや人が常にしていることなどのビジネスで成り立っています。
たとえば、食料や衣服をつくる、言語を教える、旅行者に宿を提供する、家畜を育てる、歯を治療するなどのビジネス。
言い換えると大半のビジネスは経済学者達に“成長分野”とされる領域で、大きな利益を生み出すのが困難なものと考えられています。
だからといって、それらの領域を無視すべきではありません。むしろ、積極的に取り組むべきかと。なぜかというと、重要な多くの可能性を秘めているからです。
ビジネスには
2つの種類がある?
「ほとんどのビジネスに愛がない」ということは、経済界の中での驚くべき事実の一つ。
「実利的なビジネス」と「愛のあるビジネス」。私たちはこの2つにビジネスを分けているのかもしれません。利益をもたらすビジネスを目指すのが一般的。
利益ばかり求める人々は、それなりに良い製品やサービスを生み出す方法を知っています。でも、彼らのビジネスの仕方には、いかにも「実利的」かつ「現実的」な雰囲気が漂っているのです。
このようなビジネスに、人々を惹きつけるような強力な魅力なんてありません。別の仕事をしながら進める仕事、長期で続ける気のない仕事など、ビジネスは金銭的な目標を達成するための手段にすぎない人が多いのです。
働く必要がなくても、
ビジネスを続けられる?
また、彼らはどうやって売り込むかを常に意識しているもの。もしも、もう働く必要がないとしたら、そのビジネスを続ける人はいないでしょう。
利益だけを考えたビジネスは、ある程度の期間はまずまずの成果や、非常に優れた成果を上げるかもしれません。でも、彼らのモチベーションの低さは、たやすく見抜けます。
あなたに鋭い鑑識眼があれば、何が重要なのかすぐにわかるはずです。それらの仕事が、愛をもって取り組まれていないことに。こういったビジネスが、私達の経済の大半を占めるのが現実。ビジネスの85%以上は愛がないと、思う人もいるかもしれません。
でも、私達の経済には他のタイプの愛のあるビジネスも含まれています。それは極めて稀ですが、普通とは異なる方法によって、数多くのものを生み出しています。
実は、共通の原則が。ここでの「愛」は、以下のものを意味するのです。
・特定の製品やサービスを向上させることへの熱意。
・より優れたものを生み出すために、全資金を投じたいという思い。
・長期的な目線 (起業家にとって、ビジネスとは「生きる意味」に等しいからです)。
現時点で、彼らは企業売却に興味がありませんし、将来的にも興味を持たないでしょう。起業家がもっとも望むのは、我が子のように愛する誰かに企業を譲ることなのかもしれません。
本当の愛とは?
ここでの愛とは、仕事を「ほぼ無償で」行うことを意味しています。あなたがお金を稼ぐのは、生計を立てるため、従業員に給料を払うため、ビジネスを長く続けたるためという欲求があるからです。
製品やサービスは、自分にとってもっとも愛するものであるべき。愛のあるビジネスとは、以下のようなものです。
・経営者が世界中を探し回り、最高の小麦粉を入手。朝早くにワクワクしながら目を覚まして、パンの仕上がりを確認するベーカリーショップ。
・完成前の飛行機を、従業員みんなで大切な家族のように思っている工場。
・ノートや紙は事務用品というよりも、芸術品と思っている文房具屋。
・ お金が支払われたら終わり。ではなく、顧客の旅が終わるまで気を抜かない旅行代理店。
・上質なアボカドとチキンのロールサンド。これが、困難の多い人生の喜びの一つと思うサンドイッチショップ。
愛をもって取り組まれているビジネスのすべてが、経済的に成功しているわけではありません。もしかしたら、年間収益率が3%ちょっとという場合も。でも、どの起業家もお金より重要な目的を叶えるための手段の一つと割り切っていることが多いのです。
愛を貫くことが、
最後に成功する秘訣
起業家を目指すあらゆる人に、大きなチャンスがあります。なぜかって、自分の仕事を愛していない人々が経済界をまわしているからです。ほとんどの法律事務所、歯医者、ホテル、ベーカリーなどは、愛をもって営まれてはいないのですから。効率的であり、抜け目のない企業なのかもしれませんが、最後には売却される運命。
ビジネスで成功する方法。それは、非常に独創的である必要はないし、目新しい何かを生み出す必要もありません。私達にもっとも必要なのは、自分の人生に意味を見出して、まっとうな生き方をすること。そして、他の誰よりも熱烈に愛している何かを世界に提供しましょう。